介護職は、安定したニーズがある一方で、職場ごとに福利厚生や資格支援制度の充実度に大きな差があるのが実情です。
住宅手当や休暇制度、研修体制の有無、資格取得支援の内容などは、働きやすさやキャリアアップに直結する重要な要素となります。
そのため、求人選びの段階でこれらの制度を正しく見極めることが、長く安心して働くための鍵となるでしょう。
本記事では、2026年5月に当社が介護職経験者100名を対象に実施したアンケート調査(有効回答数100)をもとに、介護職の福利厚生の実態や資格支援制度の利用状況、さらに現場で感じられている満足度や課題について詳しく解説します。
現場のリアルな声を通して、「制度が整っている職場の特徴」や「転職時に見落としやすいポイント」を整理し、これから介護職として働く方や転職を検討している方に役立つ情報をお届けします。
介護職の現場でよくみられる福利厚生は?
福利厚生は、給与と並んで職場選びを左右する重要なポイントです。
特に介護業界では、人材確保や定着率向上のためにさまざまな福利厚生を導入している施設が増えています。
そこで、現在の職場にどのような福利厚生があるのかについて調査しました。
現在の職場にある福利厚生ランキング
1位:社会保険完備 :93%
2位:交通費支給 :90%
3位:健康診断 :78%
4位:制服貸与 :65%
5位:資格手当 :60%
※複数回答につき割合の合計は100%になりません。
ここでは、導入率が高かった上位3つの福利厚生を紹介します。
1位 社会保険完備
最も多かった福利厚生は「社会保険完備」で、93%の方の職場に導入されていました。
健康保険や厚生年金、雇用保険などは安心して働くための基本的な制度であり、多くの介護施設で整備されていることが分かります。
特に、介護職は長く働き続ける方も多いため、将来の保障につながる社会保険制度の充実は重要なポイントです。
転職先を選ぶ際は、加入条件や対象範囲についても確認しておくと安心でしょう。
2位 交通費支給
2位は「交通費支給」で、90%の方の職場が導入していました。
介護職は早番や夜勤など勤務時間が不規則になることも多く、通勤にかかる負担を軽減できる交通費支給は欠かせない福利厚生といえます。
また、施設によっては全額支給や上限付き支給など制度内容が異なるため、事前に確認することが大切です。
毎月の支出を抑えられるため、実際に役立つ福利厚生として評価している方も多いようです。
3位 健康診断
3位には「健康診断」が入り、78%の方の職場で実施されていました。
介護職は身体介護や移乗介助など体力を使う業務が多いため、自身の健康管理も重要です。
定期健康診断を会社負担で受けられることで、病気の早期発見や健康維持につながります。
また、施設によっては人間ドック費用の補助や追加検査の補助制度を設けているケースもあります。
安心して長く働くためにも、健康面をサポートする福利厚生は大きなメリットといえるでしょう。
介護の現場にある珍しい福利厚生を紹介!
介護施設の福利厚生と聞くと、社会保険や交通費支給をイメージする方が多いかもしれません。
しかし、アンケートではユニークな福利厚生を導入している職場も見られました。
例えば、Netflixなどの動画配信サービスの利用補助や1食100円程度で利用できる社員食堂(100円社食)などがあります。
また、テーマパークや映画館、宿泊施設などをお得に利用できるレジャー・割引制度を導入している職場もありました。
こうした福利厚生はプライベートの時間を充実させることにつながり、職員の満足度向上や働きやすい職場づくりに役立っているようです。
介護職に従事するうえで役に立った福利厚生は?
アンケートでは、実際に働く介護職の方から「役に立った福利厚生」についても回答を集めました。
特に多く挙げられたのは、交通費支給や健康診断、健康保険といった日常的に利用する制度です。
また、資格手当や資格取得支援制度、実務者研修の受講費補助など、キャリアアップにつながる制度も高く評価されていました。
そのほか、住宅手当や食事補助、リフレッシュ休暇制度など、生活面を支える福利厚生を挙げる声も見られます。
福利厚生は実際に利用できていますか?
福利厚生は制度が整っているだけでなく、実際に利用しやすい環境であることも重要です。
アンケート調査の結果、「大体利用できている」が80%と最も多く、「すべて利用できている」が12%となりました。

1位:大体利用できている (80%)
2位:全て利用できている (12%)
3位:一部しか利用できていない (5%)
4位:利用できる制度がない (3%)
「大体利用できている」と「すべて利用できている」を合わせると92%となり、ほとんどの方が福利厚生を活用できていることが分かりました。
一方で、一部しか利用できていない方や利用できる制度がない職場も存在するため、入職前に福利厚生の内容だけでなく利用実績も確認しておくことが大切です。
福利厚生を利用しにくい、またはできない理由は?
福利厚生が整備されていても、すべての職員が十分に活用できているとは限りません。
実際に福利厚生を利用しにくい、または利用できないと回答した方に理由を聞いたところ、さまざまな事情があることが分かりました。
福利厚生を利用しにくい・利用できない理由ランキング
1位:雇用形態・立場・対象条件により利用できない (42.9%)
2位:多忙で利用・申請する余裕や機会がない (28.6%)
3位:人手不足で有休を取得できない (28.6%)
4位:利用できる制度自体がない(14.3%)
※利用しにくい、できない方のみ回答
ここでは、回答が多かった上位3つの理由を紹介します。
1位 雇用形態・立場・対象条件により利用できない
アンケートの結果、1位は「雇用形態・立場・対象条件により利用できない」となりました。
福利厚生制度が整っている職場でも、雇用形態や職場での立場、制度ごとの対象条件によって利用できない場合があります。
例えば、正社員のみを対象とした制度では、パート職員や契約職員、派遣職員は利用できないケースも少なくありません。
また、勤続年数や勤務時間、資格の有無などに条件が設定されている福利厚生もあるため、すべての職員が同じように利用できるとは限りません。
求人情報を見る際は、福利厚生の項目だけでなく、「対象となる雇用形態」「利用条件」「適用開始時期」などの詳細まで確認しましょう。
2位 多忙で利用・申請する余裕や機会がない
2位は、「多忙で利用・申請する余裕や機会がない」という理由でした。
福利厚生が用意されていても業務が忙しく、希望するタイミングで制度を活用できないケースもあるようです。
利用手続きには書類の準備や申請方法の確認が必要な場合があり、業務の合間に対応することが負担になってしまうことも少なくありません。
制度の有無だけでなく、実際に活用できる環境が整っているかも職場選びの重要なポイントです。
管理者や周囲の職員が制度利用に理解を示している職場であれば、忙しい中でも必要な支援を受けやすいでしょう。
3位 人手不足で有休を取得できない
3位は「人手不足で有休を取得できない」となりました。
介護職では人手不足の影響により、有給休暇を取得しにくいと感じる職員も少なくありません。
現場の人員に余裕がない場合、「休むと他の職員に負担がかかる」「シフト調整が難しい」といった理由から、希望通りに有休を取れないケースがあります。
本来、有給休暇は労働者に認められた権利であり、心身の疲労を回復して仕事を続けるためにも重要な制度です。
職場を選ぶ際は、有給休暇の取得率や年間休日数だけでなく、実際に職員が休みを取りやすい環境かどうかの確認も大切です。
資格支援制度はありますか?
介護業界では、職員のスキルアップやキャリア形成を支援するために資格取得支援制度を導入している職場も少なくありません。
アンケート調査の結果、「ある(一部補助あり)」が47%で最も多く、「ある(会社負担あり)」が27%となりました。
資格取得支援制度の有無
1位:ある(一部補助あり) (47%)
2位:ある(会社負担あり) (27%)
3位:わからない (12%)
4位:ない (11%)
5位:あるがほぼ自己負担 (3%)
一部補助や全額会社負担の制度があると答えた方を合わせると74%となり、多くの介護施設で何らかの資格取得支援制度が整備されていることが分かりました。
介護福祉士や実務者研修などの取得を目指している方は、支援制度の有無も職場選びの重要な判断材料になるでしょう。
資格支援制度はキャリアに役立ちましたか?
資格取得支援制度を利用した方に、実際にキャリアに役立ったかを聞いたところ、「ある程度役に立った」が62.5%で最も多く、「大いに役立った」が21.9%という結果になりました。
資格支援制度のキャリアへの効果
1位:ある程度役立った (62.5%)
2位:大いに役立った (21.9%)
3位:あまり役立たなかった (9.4%)
4位:全く役立たなかった (6.2%)
※資格支援制度を実際に利用したことがある方のみ回答
「ある程度役に立った」と「大いに役立った」と答えた方を合わせると84.4%に達しており、多くの方が資格取得を通じて知識や技術の向上を実感していることが分かります。
資格取得は業務の幅を広げるだけでなく、昇給やキャリアアップにもつながる重要なポイントといえるでしょう。
資格取得後の職場での変化は?
資格を取得すると、知識や技術が身に付くだけでなく、職場での役割や待遇にも変化が生じる場合があります。
アンケートでは、資格取得後にどのような変化があったのかについても調査しました。
ここでは、上位3つの変化を紹介します。
1位 責任が増えた
資格取得後の変化として最も多かったのは「責任が増えた」でした。
介護福祉士などの資格を取得すると、利用者へのケアだけでなく、新人職員への指導や業務の取りまとめなどを任される機会が増える傾向にあります。
また、介護計画に関する提案やチーム内での重要な役割を担う場面も多くなります。
責任が増えることに不安を感じる方もいますが、その分専門職としての信頼を得やすくなり、成長ややりがいにつながるでしょう。
2位 給与が上がった
2位は「給与が上がった」でした。
介護業界では資格取得者に対して資格手当を支給している施設が多く、介護福祉士やケアマネジャーなどの資格を取得することで収入アップが期待できます。
また、資格取得をきっかけに昇格につながるケースも少なくありません。
介護職は経験だけでなく資格も評価される業界であるため、資格取得が給与面に直接反映されやすいのが特徴です。
長期的なキャリア形成や収入向上を目指す方にとって、資格取得は重要なポイントになるでしょう。
3位 仕事内容が変わった
3位には「仕事内容が変わった」がランクインしました。
資格取得によって対応できる業務の幅が広がり、より専門的な業務を担当するようになった方が多いようです。
例えば、利用者や家族への相談対応、後輩職員への指導、介護サービスの質向上に関わる業務などを任されるケースがあります。
また、介護現場での役割が広がることで、より深く利用者支援に関われるようになったという声も見られました。
資格取得はスキルアップだけでなく、仕事の幅を広げるきっかけにもなっています。
福利厚生全体に満足していますか?
介護職として長く働き続けるためには、給与だけでなく福利厚生の充実度も重要なポイントです。
そこで、現在の職場の福利厚生に対する満足度について調査しました。
福利厚生全体の満足度
1位:やや満足(49%)
2位:普通(34%)
3位:とても満足(11%)
4位:やや不満(5%)
5位:とても不満(1%)
最も多かった回答は「やや満足」で49%、次いで「普通」が34%という結果でした。
また、「とても満足」は11%となっており、「やや満足」と合わせると60%の方が福利厚生に満足していることが分かります。
一方で、「やや不満」は5%、「とても不満」は1%と、不満を感じている方は少数でした。
今回の結果から、多くの介護施設で一定水準の福利厚生が整備されていることがうかがえます。
なお、満足度が高い職場ほど、資格取得支援や各種手当、休暇制度などが実際に利用しやすい環境になっている傾向にあります。
福利厚生の内容だけでなく、利用しやすさまで確認することが職場選びでは重要といえるでしょう。
福利厚生に対して不満に思うポイントは?
福利厚生全体の満足度は高い傾向にある一方で、改善してほしいと感じている点もあるようです。
特に、生活に直結する手当や将来の安心につながる制度について、不満を抱える声が見られました。
福利厚生に対する不満ランキング
1位:住宅手当・生活支援がない/少ない(50%)
2位:手当はあるが金額・実感が少ない/見合わない(37.5%)
3位:処遇改善加算がない(25%)
3位:退職金がない(12.5%)
(その他:12.5%)
※不満、やや不満と答えた方のみ回答
ここでは、福利厚生に関する不満として多く挙げられた上位3項目を紹介します。
1位 住宅手当・生活支援がない、または少ない
最も多かった不満は「住宅手当・生活支援がない、または少ない」で、50%の方が回答しました。
近年は物価や家賃の上昇が続いており、生活費の負担を感じている介護職も少なくありません。
そのため、住宅手当や家賃補助などの生活支援制度を求める声が多く見られました。
特に、一人暮らしや子育て世帯にとっては、住宅関連の福利厚生が充実しているかどうかが職場選びの重要なポイントになっているようです。
2位 手当はあるが金額・実感が少ない/見合わない
2位は「手当はあるが金額・実感が少ない/見合わない」で、37.5%の方が不満を感じていました。
資格手当や扶養手当などを支給している職場はありますが、実際には数千円程度の支給にとどまるケースもあり、業務量や責任の重さに見合っていないと感じる方もいるようです。
福利厚生は制度の有無だけでなく、実際に生活や収入改善につながる内容であることが重要です。
職員の満足度向上には、支給額や制度内容の見直しも求められるでしょう。
3位 処遇改善加算がない
3位は「処遇改善加算がない」となりました。
処遇改善加算とは、介護職の給与や待遇に大きく関わる制度の一つです。
しかし、すべての介護事業所が同じように処遇改善加算を受けているわけではなく、事業所の取り組み状況や制度の対象要件によっては、支給がない場合もあります。
処遇改善加算を取得している事業所では、加算による収入を介護職員の給与アップや手当の支給、職場環境の改善などに活用しています。
一方で、加算を取得していない事業所では、介護職員の待遇改善につながる手当が少なく、同じ仕事内容でも給与面で差が出る可能性があります。
福利厚生や給与条件を比較する際には、基本給だけでなく、各種手当や制度の有無を含めて総合的に判断しましょう。
まとめ
介護職の福利厚生は、社会保険完備や交通費支給、健康診断など基本的な制度は多くの職場で整備されていることが分かりました。
また、資格取得支援制度を導入している職場も多く、実際に多くの方がキャリアに役立ったと回答しています。
一方で、住宅手当や生活支援の不足、手当額への不満を感じる声も見られました。
転職や就職を検討する際は、福利厚生の有無だけでなく実際の利用しやすさや資格支援の内容まで確認し、自分に合った職場を選ぶことが大切です。


