介護職の給料に対して「安いのではないか」「今後、給与は上がるのか」など、不安や疑問を抱える方は少なくありません。
だからこそ、給与水準や国の政策、働く環境の変化を確認し、その実態を正確に把握することが重要です。
そこで本記事では、厚生労働省の最新の公的データに基づき、介護職の平均給与や年収、実際に手元に残る手取り額の現状を客観的に解説します。
また、介護福祉士といった資格取得、役職への昇進、好待遇の施設選びなど、収入アップを実現するための具体的な行動戦略もご紹介します。
介護職の給料に関して詳しく知りたい方、介護職に関心のある方は、ぜひ最後までご覧ください。
介護職の給料の現状と実態
介護職への就職や転職を検討する際、もっとも気になる要素に「給料」が挙げられるのではないでしょうか。
メディアなどで「介護職の給料は安い」という情報を目にすることも多いため、生活していけるのか不安に感じる方も少なくありません。
ここでは、厚生労働省の最新データなどに基づき、介護職員の給与のリアルな実態について解説していきます。
介護職の平均給与・年収の最新データ
厚生労働省が発表した「令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要」によると、介護職員(月給の常勤者)の平均給与額は33万8,200円*となっています。
これは基本給に加え、手当や一時金(ボーナス等)を月割りした金額を含んだ数字です。
年収に換算すると、約400万円前後が相場であると考えられます。
また、過去と比較すると、国による処遇改善施策の効果が表れており、平均給与額は年々増加傾向にあります。
ただし、この数字はあくまで全体の平均であり、保有資格や勤続年数、夜勤の有無により、実際の支給額には大きな幅があることを理解しておく必要があるでしょう。
*2026年1月現在
出典:厚生労働省「令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要」P13
手取り額はいくら?
額面の給与が33万8,200円だとしても、そこから税金や社会保険料が引かれるため、実際に口座に振り込まれる「手取り額」は少なくなります。
一般的に、手取り額は額面の約75~80%程度とされています。
ここから家賃や生活費を支払うことになるため、決して余裕がある金額とは言えないかもしれません。
しかし、夜勤手当の回数や、扶養家族の有無、住宅手当の支給状況によっては、手取り額をさらに増やすことも十分に可能です。
他産業・他職種との給与比較
全産業の平均給与と比較すると、介護職の給与水準はいまだに低い位置であることは否定できません。
国税庁の民間給与実態統計調査などを参考にすると、全産業平均よりも数万円から数十万円ほど低い年収となる可能性があります。
しかし、他産業との差は徐々に縮まりつつあります。
特に、宿泊業や飲食サービス業などの業界と比較した場合は、介護職の方が高い水準にある場合も多く、景気に左右されにくい安定性という面では優位性があります。
また、医療福祉分野の中だけで比較すると、看護師や理学療法士よりは低いものの、保育士などの職業と同水準か、むしろ夜勤がある分やや高い傾向にあります。
なぜ給料は「安い」と言われるのか?
給与水準が改善傾向にあるにもかかわらず、なぜ世間一般には「介護職=給料が安い」というイメージが根強く残っているのでしょうか。
そこには、単なる金額の問題のみならず、介護という仕事の歴史的背景や、日本の社会保障制度特有の構造的な問題が深く関係しています。
以下では、給料が上がりにくいとされてきた根本的な理由と、それを打破するために国がどのような対策を講じているのか、その仕組みについて詳しく掘り下げていきます。
「安い」イメージが定着した社会的な背景
かつては、高齢者の介護は「家庭内の女性が無償で行うもの」という認識が長く続いていたと言われています。
この「家事の延長」という意識が社会通念として根強く残っていたため、介護労働に対する専門性が正当に評価されず、賃金水準が低く抑えられてきた可能性があるでしょう。
また、介護保険制度が始まる前は措置制度であったことや、利益を追求しない社会福祉法人が主な担い手であったことも関係しています。
加えて、ビジネスとして利益を上げ、それを給与に還元するという意識が希薄だった可能性もあるでしょう。
このような過去の背景が、現在の賃金構造にも少なからず影を落としていると考察できます。
介護職員処遇改善加算の仕組みと効果
給与の低さを解消するために導入されたのが「介護職員処遇改善加算」です。
これは、事業所が一定の要件(キャリアパスの整備や職場環境の改善など)を満たした場合、介護報酬に上乗せして給付金が支給される仕組みです。
原則として、この加算分は「全て介護職員の賃金改善に充てなければならない」というルールになっています。
また、経験・技能のあるリーダー級職員の給与を重点的に引き上げる「特定処遇改善加算」も導入されました。
これらの施策により、要件を満たしている事業所では、月額で数万円単位の給与アップが実現しており、確実に効果を上げています。
給与改善に向けた国の最新の取り組みと動向
政府は「介護職の賃上げ」を重要政策の一つとして掲げており、次々と対策を打ち出しています。
令和4年には「介護職員等ベースアップ等支援加算」が創設され、月額9,000円相当の賃上げが実施されました。
さらに、令和6年度の介護報酬改定では、これまでの複雑な処遇改善加算が一本化され、より多くの事業所が加算を取得しやすい環境が整備されつつあります。
国としても、他産業との賃金格差をなくし、人材を確保するために今後も継続的な賃上げ支援を行っていく方針を明確にしているのです。
そのため、今後も制度面からのバックアップが強化されていくことに期待できるでしょう。
給料を左右する具体的な要因と平均額の差
介護職と一口に言っても、全員が同じ給料をもらっているわけではありません。
実際、働いている方たちの間において、年収で100万円以上の差がつくことも珍しくありません。
それでは、一体何がその差を生んでいるのでしょうか。
ここからは、それぞれの要因が具体的にどれくらいの金額差につながるのかを分析し、今後のキャリアプランを考える上での指標となる情報を提供します。
資格の有無で給与はどれだけ変わるか
介護業界では資格が重要視されやすく、保有している資格により、給与ベースが大きく変わるケースも珍しくありません。
例えば、無資格者と比較して「介護職員初任者研修」の修了者は、月に数千円程度の手当がつきます。
また、国家資格である「介護福祉士」を取得すると、手当の額はさらにアップします。
処遇改善加算の配分では、有資格者が優遇される傾向にあり、介護福祉士を取得することにより、無資格の場合と比べて月収・年収の面で一定の差が生じるケースがあります。
これらから、資格取得は介護職で働く上で、もっとも確実な給与アップの手段であるといえるでしょう。
勤続年数・経験年数による給与の推移
日本の多くの企業と同様に、介護業界でも勤続年数は給与に反映されます。
ただし、一般的なサラリーマンのような定期昇給は期待しにくいのが現状です。
それでも、経験年数を重ねることで基本給が段階的に上がる傾向にあり、長く勤続してリーダー的な立場を担うようになると、処遇改善の対象となって月々の賃金が上乗せされるケースもあります。
長く一つの法人で働き続け、信頼とスキルを積み上げることが、結果として給与の安定的な上昇につながっていきます。
施設形態別に見る給与の違いと特徴
働く場所(施設形態)によっても、平均給与は異なります。
一般的に、給与水準が高いのは「特別養護老人ホーム(特養)」や「介護老人保健施設(老健)」などの入所型施設です。
これらの施設では、夜勤が必須で夜勤手当が加算されるほか、処遇改善加算の取得率も高いためです。
一方、「デイサービス」や「訪問介護」などの通所・訪問系サービスは、夜勤がない場合が多く、その分手取り額は低くなる傾向にあります。
ただし、訪問介護の場合は、登録ヘルパーとして身体介護を多数こなすことにより、高時給を得られるケースもあります。
働く地域(都市部と地方)による給与の差
地域による最低賃金の差や物価の違いは、介護職の給与にも反映されています。
東京・神奈川・大阪などの大都市圏では、基本給の設定が高く、さらに「地域手当」が加算されるため、地方に比べて給与総額が高くなる傾向にあります。
ただし、都市部は家賃などの生活コストも高いため、一概に都市部のほうが豊かに暮らせるとは限りません。
地方であっても、手当が充実している優良な社会福祉法人などを選べば、都市部並みの待遇を得られる可能性は十分にあるでしょう。
介護職が給与アップを実現するための具体的な方法
現状の給料に満足していない場合、ただ待っているだけでは大幅な昇給は望めません。
資格取得によるスキルアップ、役職を目指すキャリアアップ、より条件の良い職場への転職など、戦略的な方法を考えることが必要です。
ここでは、今日から意識して取り組める、具体的かつ再現性の高い給与アップの方法を解説していきます。
介護福祉士などの上位資格を取得する
もっとも明確で確実な方法は、国家資格である「介護福祉士」の取得です。
前述した通り、資格の取得には、資格手当や処遇改善加算の配分で大きなメリットがあります。
実務経験3年以上などの受験資格が必要ですが、働きながら取得を目指す価値は十分にあります。
さらに、その先には「介護支援専門員(ケアマネジャー)」や「認定介護福祉士」といった上位資格もあります。
また、喀痰吸引等研修などの専門的な研修を修了することで、特定の手当が付く事業所もあります。
給与アップを目指すのならば、まず資格取得を優先目標に設定するのがおすすめです。
役職への昇進・キャリアアップを目指す
現場の介護スタッフとして経験を積んだ後は、ユニットリーダー、フロアリーダー、サービス提供責任者、そして施設長といった管理職へのキャリアパスを目指せます。
役職に就けば「役職手当」が支給されるようになり、結果的に給与アップへとつながります。
管理職になった場合、現場業務のみならず、スタッフのマネジメントや収支管理などの業務が増えますが、昇給額の幅も広がるでしょう。
そのため、自身が所属する組織の人事考課制度を確認し、どのようなスキルや実績があれば昇進できるのか、しっかりと把握しておくことが大切です。
給与水準の高い施設・職場への転職
現在の職場で昇給が見込めない場合は、給与水準の高いほかの施設への転職も選択肢の一つです。
同じ資格や経験年数であっても、運営法人の規模や経営方針により、給料は大きく異なります。
特に、処遇改善加算の「加算I」を取得しているか、特定処遇改善加算を算定しているかは重要なチェックポイントです。
また、賞与の実績や退職金制度の有無も、生涯年収に大きく影響します。
まずは転職サイトやエージェントを活用し、より待遇の良い求人をリサーチしてみましょう。
夜勤や超過勤務手当を有効活用する
今すぐに手取り額を増やしたい場合、即効性があるのは「夜勤」の回数を増やすことです。
夜勤手当は職場によって異なりますが、月に数回の夜勤で収入がプラスになるケースが多く見られます。
体力的な負担は増えますが、集中的に稼ぎたい時期には有効な手段です。
また、残業(超過勤務)をした場合は必ず申請し、正当な対価を受け取ることも労働者の権利として重要です。
サービス残業が常態化しているような職場であれば、転職も考えたほうが良いでしょう。
介護職の給料は今後どうなる?
少子高齢化が加速する日本において、介護職の需要は高まる一方です。
しかし、需要があるからといって自動的に給料が上がるわけではありません。
現場で働く介護職の人たちにとって、将来の給与動向は重大な問題です。
ここでは、今後の介護業界の展望と、どのようにして収入を上げていくべきかという点を解説していきます。
処遇改善の継続に期待される
団塊の世代が後期高齢者となる2025年問題、さらにその先の2040年問題を見据え、国は介護人材の確保に必死です。
人材不足による介護崩壊を防ぐためには、処遇改善を止めるわけにはいきません。
したがって、今後も何らかの形での賃上げ支援策は継続されると予想されます。
ただし、一律的な給付ではなく、質の高いケアを提供する事業所や、IT化によって生産性を向上させた事業所を優先して支援するなど、よりメリハリの効いた配分となる可能性があります。
介護職で働くのならば、今後も国の施策動向を常に注視しておく必要があるでしょう。
自身が納得できる給料を目指す方法
国の施策や法人の経営努力に期待するばかりでなく、自分自身で納得できる給料を得る姿勢も大切です。
例えば、それは単に資格を取るだけでなく「あなたにいてほしい」と思われる職員になることです。
認知症ケアのスペシャリストになる、新人教育に長けている、レクリエーションの企画力が豊かなど、プラスアルファの強みを持つことで、給与交渉の余地が生まれたり、好条件でのヘッドハンティングを受けたりする可能性が高まります。
自分の市場価値を高める努力は、多くの場面でメリットとなるでしょう。
介護職の給料に関するよくある質問
ここでは、介護職の給料に関してよく寄せられる質問と、その回答をまとめました。
これから介護業界に入ろうとしている方や、現状に悩んでいる方は、ぜひ参考にしてみてください。
未経験や無資格でも給料は平均額をもらえる?
未経験・無資格からスタートする場合、残念ながら最初から平均給与額をもらえる可能性は低いです。
この平均額とは、長年勤続している有資格者や役職者の給与も含んだ数字であるためです。
最初は平均よりも低い水準からのスタートになりますが、実務者研修を受けたり、3年後に介護福祉士を取得したりすることで、着実に給与は上がっていきます。
また、資格取得支援制度がある施設を選べば、働きながら費用負担なく資格を取れるため、将来的な給与アップへの近道となります。
給料を上げるために一番効率の良い方法は?
もっとも効率的で再現性が高いのは「介護福祉士資格の取得」と「夜勤のある施設への就職」の組み合わせです。
資格手当と夜勤手当が重なることにより、月収ベースで数万円の違いが出ます。
さらに、処遇改善加算がしっかりと配分されている法人を選ぶことができれば、最短ルートで高水準の給与に到達できます。
まずは、求人票の「手当」の欄と「賞与」の実績をしっかりと確認し、資格取得の勉強を並行して進めることがおすすめです。
介護職の給与は今後も上がる?
個人差や職場差はあるものの、収入が上がる可能性は比較的高いといえるでしょう。
この背景には、介護人材の不足が深刻化しており、他産業との賃金競争に勝たなければ人が集まらない状況があるためです。
政府も「他産業並みの賃金水準」を目標に掲げており、制度改正の度にプラスの改定が行われています。
ただし、全ての施設で一律に上がるわけではなく、経営努力をして加算を取得している事業所と、そうでない事業所との格差は開いていくでしょう。
将来性のある職場を見極める目が、より一層重要になっていくと予想されます。
まとめ
「介護職の給料は安い」というイメージは、いまだ根強く残っていますが、データを見れば着実に改善が進んでいることが分かります。
平均年収は上昇傾向にあり、資格取得やキャリアアップ、夜勤の活用など、自らの行動次第で収入を増やすルートは明確に存在します。
大切なのは、業界の仕組みや給与が決まる要因を正しく理解し、うまく立ち回ることです。
また、国による支援も今後継続が見込まれるため、介護職は将来性のある職業といえます。
ご自身のライフプランに合わせ、最適な働き方とキャリアパスを描いてみてください。

