介護の仕事を始めたいと思って情報を集めていると、たくさんの資格があることに驚くかもしれません。
介護に関する資格は、細かいものも含めると20種類以上もあり、どれから取得すればいいか悩む方も多いと思います。
しかし、実際に介護現場で働く場合、必要となる資格は決して多くありません。
そこで本記事では、介護職として働き始める方が最初に取るべき資格から、先々のステップアップを想定した資格取得の順番について、詳しく解説します。
介護の仕事に挑戦したい方、介護関連の資格取得を目指している方は、ぜひ参考にしてください。
介護の仕事に資格は必要?
そもそも介護の仕事を始めるのに資格は必要なのでしょうか?
実は、職場によっては限定的に無資格でも働くことが可能です。
ただし、今後のキャリアアップや継続して働くためには、資格の取得は必須となります。
そこでまずは、資格の重要性について解説していきます。
法改正によって資格取得が義務化
2021年の介護報酬改定により、無資格で働く場合の条件や義務化が明確化されました。
これによって、3年の措置期間が過ぎた2024年3月以降は、働き始めてから1年以内に「認知症介護基礎研修」または「介護職員初任者研修」の受講が必須となっています。
つまり、無資格でも働き始めることは可能ですが、資格を取得しなければ継続して働き続けることはできません。
どうしても資格取得の時間を確保できない方は、自治体によっては150分の動画視聴と個人ワークのみで修了証が発行できる「認知症介護基礎研修のeラーニング」を受講するという方法もあります。
*2026年1月現在
出典:厚生労働省「令和3年度介護報酬改定における改定事項について」P12
資格がないと行えない業務もある
介護職の中で、訪問介護での身体介護にあたる業務に関しては、介護職員初任者研修の受講が必須となっています。
身体介護とは、家事援助などの間接業務と異なり、利用者様の身体に直接触れて行う業務を指し、更衣介助や移動介助、食事介助、入浴介助などです。
身体介護は利用者の安全に直結する業務であり、訪問介護では一対一での介助が基本となっているため、資格の取得が必須とされています。
予備知識がないと不安に感じることも
無資格・未経験で働き始めると、基礎的な知識や介助技術を一から覚えることになるため、かなりの苦労が予想されます。
コミュニケーションの取り方や、認知症の方への対応、疾患に関する理解など、幅広い知識と技術が必要です。
介護に携わったことのない人にとっては、資格取得を通じて基本的な内容を学んでおくほうが、安心して働けることでしょう。
働きながらの取得は可能?
介護職員初任者研修の履修には、130時間の講習を受ける必要があります。
土日のみの履修コースや、一部通信講座を取り入れたコースもあり、3カ月程度かかりますが働きながらの取得も可能です。
認知症介護基礎研修は、eラーニングのみで取得できるのがメリットですが、あくまでも時間がない人への対処という意味合いが強いです。
そのため、将来的なキャリアアップを望むのであれば、初任者研修を受けるほうが望ましいでしょう。
介護資格の取得に王道の順番はある?
介護の資格は数多くあるとお伝えしましたが、公的な資格として広く認められているものは少数です。
ここで紹介する資格を順番に取得していけば、ゆくゆくはサービス提供責任者(サ責)や管理者も目指していけます。
それでは、資格取得の王道ともいえるものをご紹介します。
介護職員初任者研修
介護職員初任者研修は、介護の基礎知識と基本的な介助技術を学べる入門資格です。
カリキュラムは国によって指定されており、10科目で計130時間の講義と実技の受講、修了試験の合格が必須となっています。
短期集中の速習コースであれば、3週間程度での取得も可能です。
そのため、介護の仕事を始めるのであれば、最初に取り組むべき資格といえるでしょう。
受講費用は5〜10万円と安くはない金額ですが、後述する方法を用いれば、条件により費用を減額、または無料にすることが可能です。
介護福祉士実務者研修
介護職員実務者研修とは、単に実務者研修とも呼ばれることもある、より専門性の高い知識と技術の習得が可能な資格です。
無資格でも受講が可能ですが、450時間の受講が必須となり、資格取得まで6カ月以上を要します。
ただし、初任者研修の資格があると、450時間のうちの130時間分が免除されるため、初任者研修を受けた後に就職し、働きながら実務者研修を受けるのが一般的なルートです。
また、実務者研修は後述の介護福祉士資格の受験要件にもなっているため、キャリアアップを考えると必ず取得したい資格となります。
介護福祉士
介護福祉士は国家資格であり、介護の資格の中でもっとも認知度が高く、社会的な信頼性も高いです。
前述の2つと大きく異なり、受講ではなく介護福祉士資格試験の合格によって取得できます。
ただし、受験資格を満たさなければ受験自体ができません。
受験資格は、介護福祉士養成施設(大学や専門学校など)や福祉系の高校の卒業、または3年以上の実務経験と実務者研修の履修によって得られます。
そのため、働きながら介護福祉士を目指すのであれば、実務経験ルートからの受験が最適でしょう。
なお、合格率は平均60%前後です。
試験は年に一度、1月の最終日曜日に行われることが多く、不合格になると1年待たなければならないため、しっかりと準備を整えて受験しましょう。
介護支援専門員
介護職にとって介護支援専門員の資格は必須ではありませんが、キャリアアップの中でケアマネジャーを目指す場合は必要となります。
ケアマネジャーとは、介護を必要とする方の介護支援計画(ケアプラン)を作成する職種です。
利用者の状態や、生活に関する希望を聞き取り、複数のサービス事業者と連携することで、生活課題の解決を継続的に行う仕事となります。
介護支援専門員の受験資格は、介護福祉士や社会福祉士、看護師などの資格を取得後に5年以上その業務に就くか、相談援助業務5年以上の実務経験で得られます。
合格率は20%ほどで、資格試験の中でも高難易度です。
取得のハードルは高いですが、主にデスクワークと聞き取りのための訪問がメインとなるため、介護職に比べて身体的な負担は少なく、年を重ねても働き続けられるメリットがあります。
資格取得のメリット
資格の取得は、単なるスキルアップにとどまりません。
任される仕事の幅が広がり、キャリアアップにつながるとともに、職場によっては資格手当によって給料アップも見込めます。
また、転職先の基本給にも、資格の有無が関係してくることでしょう。
ここでは、積極的な資格取得のメリットについて解説していきます。
業務の幅が広がる
資格を持っていることで、重要なポジションを任されたり、専門性の高い業務を行えるようになったりして、キャリアアップのチャンスが増えるでしょう。
例えば、訪問介護のサービス提供責任者は、実務者研修の受講が必須条件です。
また、グループホームでは認知症に特化したスキルが重視されるため、後述する認知症関連の資格取得は、自身のスキルアップにつながるでしょう。
実務者研修や介護福祉士に加え、どのような職場で働くかにより、ほかの資格取得を視野に入れることもおすすめです。
資格取得によって収入がアップする
職場によっては、実務者研修や介護福祉士の取得により、資格手当が支給されるケースも多く見られます。
昇給は相対的な評価ですが、資格手当は絶対評価です。
資格の取得により、確実に給料を上げることができるため、資格手当がある場合は取得しておいて損はないでしょう。
転職の際に有利になる
転職したとき、最初の基本給を決める際にも、資格の有無は大きく影響します。
どの職場でも、中途採用には即戦力を求める傾向が強いため、現場での経験に加え、多くの資格を保持していることは、ほかの応募者との差別化につながるでしょう。
もし初任者研修しか受けていなくても、実務者研修や介護福祉士を取得予定であることをアピールすることが大切です。
ほかにはどんな資格がある?
ベースとなる資格のほかに、さらに上位の資格や、一部の介助技術に特化した資格があります。
これらが資格手当に直結することは少ないですが、個人のスキルアップが評価され、昇給することもあるかもしれません。
ここでは、スキルアップのための代表的な資格を6つご紹介します。
認定介護福祉士
認定介護福祉士は、2015年に新設された資格です。
介護福祉士の上位互換の位置づけで、介護に関する知識のみならず、チームリーダーとして組織を引っ張ったり、他職種との連携をしたりと広範な役割が期待されています。
認定介護福祉士養成研修を受けるには、介護福祉士として5年以上の実務経験を重ね、100時間以上の現任研修を受講するなどの条件が必要です。
また、要件を満たした後に養成研修を受講し、600時間分の課程をすべて修了しなければなりません。
取得までかなり大変ですが、まだ比較的新しい資格であるため、周囲との差別化を図ることが可能です。
喀痰吸引等研修
喀痰(かくたん)吸引等研修を受講することで、自力で痰を排出できずに生命が危ぶまれる利用者に痰吸引を行ったり、口から食べ物を摂取できない方に胃ろうや経鼻カテーテルで栄養を注入したりできるようになります。
対象者や内容によって1号から3号に分かれており、1号・2号はすべての利用者に、第3号は特定の利用者に対してのみ実施が認められているものです。
また、基本研修と実地研修に分かれていますが、2016年度(2017年1月)以降では、介護福祉士を取得した人は実地研修のみで取得できます。
実際に吸引や経管栄養を行えるのは「登録喀痰吸引等事業者」として、都道府県に登録された事業所での業務に限られますが、需要が多いことから転職にも有利に働くでしょう。
認知症ケア専門士
認知症ケア専門士とは、一般社団法人「日本認知症ケア学会」が認定する民間資格です。
認知症介護におけるプロフェッショナルの育成を目的とし、認知症に関する専門的な知識や技術を持っていることの証明となります。
研修の受講は必要なく、テキストなどで自習し、年に一度行われる認知症ケア専門士認定試験に合格すると取得が可能です。
なお、過去10年以内に認知症ケアの業務に3年以上携わっていることが、受験資格の条件となります。
職種や職務内容に制限はないため、介護の仕事をしていれば、自然と受験資格が得られるでしょう。
介護食士
介護食士は「全国調理職業訓練協会」が実施している「技能評価制度」の一つです。
要介護者に食事を提供する介護士の調理技術向上を目的として、制度化されました。
栄養面のみならず、食べやすさや飲み込みやすさなど、安全にも配慮した食事メニューの考案が可能となります。
1級から3級まで分かれており、誰でも受講可能な3級は学科25時間、実習47時間の受講と修了試験の合格が必要です。
2級の受験資格は3級の取得者、1級は2級を取得後、介護食調理実務に2年以上従事している25歳以上となっています。
重度訪問介護従事者
重度訪問介護従事者は、障害程度区分4〜6に該当する「日常的に介護を必要とする利用者」を対象とする資格です。
難病患者や脳性まひ、脊髄損傷などによる重度の障がい者は、ケガや骨折、誤嚥などのリスクが大きく、より高い専門性が求められます。
基本課程の修了で障害区分4・5の方の訪問介護ができるようになり、追加課程を修了すると区分6まで対応可能です。
特に受講資格はなく、未経験でも取得可能ですが、初任者研修で基礎的な内容を習得してからのほうが望ましいでしょう。
おむつマイスター・おむつフィッター
おむつマイスターは花王が、おむつフィッターはむつき庵が、それぞれ実施している民間資格です。
おむつの適切な使用方法やフィッティング、排泄のメカニズムを学ぶことで、スキントラブルや尿漏れを防ぎ、専門的な排泄ケアのスキルを得ることができます。
おむつフィッターは1級から3級まであり、1級では薬との関連性や移乗、ポジショニングといった幅広い知識の習得が可能です。
そのため、職場内での排泄ケアの舵取り役として期待されるでしょう。
初任者研修の受講費用を無料にする方法
介護職員初任者研修は、継続的に働くためには必要な資格ですが、受講費用は大きな出費にもなります。
しかし、場合によっては費用を半額以下、あるいは全額無料にすることも可能です。
ほとんどの方が対象となりますので、必ず押さえておきましょう。
ハローワークの職業訓練なら無料で取得可能
介護職員初任者研修は、ハローワークの職業訓練(ハロートレーニング)であれば、無料で資格取得が可能です。
職業訓練には2種類あり、雇用保険受給者を対象とした早期再就職のための「公共職業訓練(離職者訓練)」と、雇用保険の受給対象ではない人向けの「求職者支援訓練」が該当します。
条件を満たせば、失業保険を受給しながら無料で資格が取得できます。
求職者支援訓練は、失業保険の受給が終わった後でも申し込むことができ、無料で職業訓練を受けられるとともに、収入や資産の状況によっては職業訓練受講給付金(月10万円)が支給されます。
経済的な支援を受けながら、職業訓練を受けることができるため、有効な手段の一つといえるでしょう。
自治体の資格取得支援制度を活用
介護士の確保に向けて、都道府県や市町村が独自に資格取得支援の取り組みを行っていることがあります。
東京都の社会福祉協議会では、未経験から介護職を目指す人向けに、初任者研修を無料で受講できたり、介護施設で働きながらの資格取得を斡旋したりしています。
これらは、期間や定員が決められていることが多いため、お住まいの地域について調べ、指定された期間で受講可能か検討する必要があります。
無料キャンペーン中のスクールを探す
タイミングによっては、初任者研修を実施しているスクールが「受講料の割引」や「無料キャンペーン」を行っていることもあります。
高額な受講費用を負担なしで受けられるのは、非常に有効な方法でしょう。
また、現在の職場で働きながら介護の資格を取得したい人には適した方法です。
ただし、キャンペーンは不定期で行われるため、過去に同様のキャンペーンを行ったことのあるスクールの情報は、こまめにチェックしておきましょう。
就職先の会社によっては取得費用を全額負担してくれる場合も
介護施設によっては、就職後に資格取得の支援を行うことがあります。
受講費用を職場が全額負担してくれるのみならず、受講時間も勤務扱いとして、給料が発生する制度があることもあります。
また、実務者研修からその他の資格取得費用まで、全額補助してもらえることもあるため、転職先を探す際はいろいろと調べてみましょう。
理想の働き方を目指す
資格取得によってキャリアアップを目指すことは、給料面のみならず、身体への負担や多様な働き方を実現する上でも重要です。
つまり、長く働き続けるためには、将来的な理想の働き方を見据えた「長期的な視点」を持つことが大切となります。
身体的な負担の少ない「サービス提供責任者」「ケアマネジャー」「管理者」へ
「サービス提供責任者」「ケアマネジャー」「管理者」になると、デスクワークがメインとなるため、身体介護に携わることはほぼなくなります。
介護の仕事は身体への負担も大きく、年を重ねるごとにその影響を強く感じるでしょう。
しかし、デスクワークであれば、体力の低下をそれほど気にせず働き続けられます。
そのため、中堅期に差し掛かる頃にサービス提供責任者やケアマネジャー、管理者へとステップアップを図る人は多いと思われます。
若いうちに現場で働いた経験を生かしながらマネジメントも学び、新人の育成や施設の運営に携われるよう、長期的なワークライフの視点を持つことが大切です。
出産・育児・家庭との両立のため
サービス提供責任者やケアマネジャー、管理者には基本的に夜勤がなく、生活リズムやワークライフバランスを取りやすいのがメリットといえます。
ほかのサービス事業所やご家族への連絡など、日中の業務が主になるため、勤務は原則日勤のみです。
中にはフレックスタイムを導入しているところもあり、育児や老親の介護など、家庭とのバランスを取りやすくなります。
ただし、職場によってはケアマネジャーも夜勤に入ることがあるため、面接時に確認しておきましょう。
まとめ
介護の資格は「初任者研修」「実務者研修」「介護福祉士」の順に取得していくのが基本です。
さらに余裕があれば、今回ご紹介したその他の資格にも挑戦すると、キャリアの幅を大きく広げられます。
併せて、受講費用を減額できる方法も活用すれば、効率よく無理なく、ステップアップが可能です。
資格を一つひとつ取得するごとに、仕事の幅や待遇も広がります。
ぜひ、資格取得への一歩を踏み出し、あなたの介護キャリアを確実に前進させましょう。

