「介護福祉士は、普通に勉強していれば合格できる」と、現場でそのような言葉を耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
実際、介護福祉士国家試験の合格率は例年70〜80%と比較的高水準で推移しています。
しかし、第37回試験の合格率は78.3%となり、過去最高だった前回と比べて4.5ポイント低下しました。
この結果からも分かるように、試験が常に同じ難易度とは限りません。
本記事では、第37回試験の詳細データや過去10年の合格率推移をもとに、数字だけでは見えにくい介護福祉士国家試験の実際の難易度を解説します。
- 第37回介護福祉士国家試験の合格率・合格者数
- 過去10年の合格率・受験者数の推移
- 介護福祉士国家試験の合格基準と配点
- 介護福祉士試験の難易度と不合格になる要因
- 合格率8割でも落ちる?試験の難易度と不合格になる人の特徴
- 合格率を上げるための効果的な勉強法
- 過去問と模擬試験の活用方法
- 長文・応用問題対策としての「模擬試験」活用法
- 合格後のメリット!資格取得で給料やキャリアはどう変わる?
- 介護福祉士国家試験に合格した後の手続きと登録
- 【不合格者向け】合格を目指すための対策
- 介護福祉士国家試験に関するよくあるQ&A
- まとめ
第37回介護福祉士国家試験の合格率・合格者数
2025年1月に実施された第37回試験の結果が確定しました。
合格率や基準点などの詳細データをもとに、今回の試験がどのような傾向だったのかを紐解いていきます。
第37回の合格率は78.3%
厚生労働省の発表によると、第37回介護福祉士国家試験の結果は以下の通りです。
・合格率:78.3%
・受験者数:75,387人
・合格者数:58,992人
・合格基準点:70点
合格率は78.3%となり、過去最高を記録した前回(第36回)の82.8%から4.5ポイント低下しました。
2年ぶりに80%を下回る結果となったことから、試験の難化があったことが読み取れます。
また、合格基準点は「70点」でした。
これは総得点の60%ラインである75点よりも低く補正されており、全体的に得点が伸びにくい試験だったことがうかがえます。
参照:厚生労働省「介護福祉士国家試験の受験者・合格者・合格率の推移」
前回試験と比較した難易度の変化
合格率が低下した主な要因は、出題傾向の変化にあると考えられます。
第37回では、単なる知識の暗記だけでは太刀打ちできない「応用力」を問う問題が目立ちました。
具体的には、長文の事例問題が増加し、読解に時間を要する構成になっていたことや、医療的ケアなどの専門領域で深い理解が求められたことが挙げられます。
「過去問と同じような問題が出なかった」と感じた受験生も多く、現場での実践的な判断力が合否を分ける結果となりました。
受験者数・合格者数の詳細データと傾向
受験者数は75,387人と、前回の74,595人から微増しています。
これは2025年問題を背景に、介護人材へのニーズが依然として高いことを示しています。
合格者数は58,992人となっています。
合格率が高い試験とはいえ、しっかりとした対策なしに合格できるほど甘くないことが、この数字からも分かります。
参照:厚生労働省「介護福祉士国家試験の受験者・合格者・合格率の推移」
過去10年の合格率・受験者数の推移
試験の全体像を掴むためには、単年の結果だけでなく長期的なトレンドを見る必要があります。
過去10年の推移を確認してみましょう。
合格率と合格基準点の推移データ
過去の推移を見ると、合格率は全体として上昇傾向にありましたが、直近ではやや調整局面に入っています。
| 回数(実施年) | 合格率 | 合格基準点 | 受験者数 |
| 第37回(2025年) | 78.3% | 70点 | 75,387人 |
| 第36回(2024年) | 82.8% | 67点 | 74,595人 |
| 第35回(2023年) | 84.3% | 75点 | 79,151人 |
| 第34回(2022年) | 72.3% | 78点 | 83,082人 |
| 第33回(2021年) | 71.0% | 75点 | 84,483人 |
合格率は70%以上で安定しているものの、合格基準点は「67点」から「78点」まで大きく変動しています。
問題の難易度によって合格ラインが上下するため、どのような回に当たっても対応できる実力をつけておくことが重要です。
参照:厚生労働省「介護福祉士国家試験の受験者・合格者・合格率の推移」
合格率が高い理由と他資格との比較
介護福祉士の合格率が他の福祉系国家資格と比べて高いのには、明確な理由があります。
それは受験資格のハードルです。
・介護福祉士:約70〜80%(条件:実務経験3年以上+実務者研修修了など)
・社会福祉士:約30〜50%
・ケアマネジャー:約20%前後
介護福祉士試験を受ける人の多くは、すでに現場で3年以上の経験を積み、実務者研修という専門教育を受けた「プロフェッショナル」です。
受験者の基礎レベルが高いため、結果として合格率も高くなります。
「試験自体が簡単だから」ではなく、「受験者が優秀だから」合格率が高いという点を理解しておきましょう。
参照:厚生労働省「介護福祉士国家試験の受験者・合格者・合格率の推移」
参照:厚生労働省「社会福祉士国家試験の受験者・合格者・合格率の推移」
参照:厚生労働省「第27回介護支援専門員実務研修受講試験の実施状況について」
介護福祉士国家試験の合格基準と配点
「何点取れば合格できるのか」を知ることは、対策の第一歩です。
ここでは、介護福祉士国家試験の合格基準ルールについて解説します。
合格基準点(ボーダーライン)
合格するためには、原則として以下の基準を満たす必要があります。
- 総得点(125点満点)の60%程度(75点前後)以上であること
- その年の問題難易度により補正される
「60%程度」というのがポイントです。
問題が難しい年は基準点が下がり、簡単な年は上がります。
そのため、75点ギリギリを目指す勉強法は危険です。
どのような難易度でも安定して合格できるよう、安全圏と言われる80点(約64%)以上を目標に設定することをおすすめします。
参照:公益社団法人社会福祉振興・試験センター「介護福祉士国家試験」
合否を分ける「0点科目」のルール
総合点が合格基準を超えていても、不合格になるケースがあります。
それが「0点科目」のルールです。
合格の必須条件として「11科目群すべてにおいて得点があった者」と定められています。
11ある科目群のうち、たった一つでも0点の科目があると、他が満点でも即不合格となります。
「医療的ケア」など出題数が少ない科目は要注意です。
苦手な科目を「捨て科目」にすることはできません。
全範囲をまんべんなく学習し、最低でも各科目1点は確保する戦略が必要です。
参照:公益社団法人社会福祉振興・試験センター「介護福祉士国家試験」
介護福祉士試験の難易度と不合格になる要因
合格率が高いことで知られる介護福祉士試験ですが、毎年1万人以上の方が涙をのんでいる現実があります。
「自分は大丈夫」と思っていても、思わぬ落とし穴にはまってしまうケースは少なくありません。
不合格になってしまう具体的な要因を正しく理解し、万全の対策で挑むことが大切です。
合格率8割でも油断できない理由
「5人に4人が受かるなら簡単な試験だろう」と考えてしまうのは危険です。
介護福祉士国家試験の合格率が高いのは、問題が易しいからではなく、そもそも受験者のレベルが非常に高いためです。
受験資格には、3年以上の実務経験に加えて450時間の実務者研修修了が求められます。
つまり、試験を受けているのは、すでに現場経験を積んだ介護のプロばかりであり、その中で合否が競われているのです。
さらに、試験は11の科目群で構成されており、いずれかの科目群で0点を取ってしまうと、総合得点が合格基準を満たしていても不合格となります。
周囲の受験者レベルが高いことに加え、科目ごとの足切りがある点からも、介護福祉士国家試験は決して気を抜けないシビアな試験だといえるでしょう。
不合格者に共通する傾向
不合格となってしまう方には、いくつか共通した傾向があります。
多くの場合、努力不足というよりも「学習の方向性」がズレていることが原因です。
まず多いのが、現場経験への過信です。
日々の介護現場で培った「自分たちのやり方」を正解だと思い込み、試験で求められる教科書的・制度的な「標準の介護」を選べなくなってしまうケースが見られます。
次に注意したいのが、過去問を丸暗記してしまう学習方法です。
なぜその選択肢が正しいのか、理由まで理解していなければ、応用問題では確実に失点してしまいます。
さらに、時間配分のミスも不合格者に多い特徴です。
1問あたりに使える時間は約1分半と短く、考え込みすぎると最後まで解ききれません。
介護福祉士国家試験では、実務と試験を切り分け、「制度上の正解」を選ぶ意識に切り替えて学習することが、合格への近道となります。
合格率8割でも落ちる?試験の難易度と不合格になる人の特徴
合格率8割という数字の裏には、毎年涙をのむ1万人以上の受験者がいます。
ここでは、反面教師として参考にしておきたい「落ちる人の特徴」を深掘りします。
合格率が高いのに落ちる理由は?「油断」と「0点科目」
介護福祉士国家試験で不合格になる主な原因は、「油断」と「特定の科目群での0点」です。
全体の得点が足りていても、特定の科目群で0点を取ると即不合格になります。
また、合格率の高さから「本番は大丈夫」と気を抜いてしまうことも失敗につながります。
受験者のレベルが高い試験だからこそ、苦手分野を作らず、最後まで丁寧に対策することが大切です。
不合格者の共通点1.「実務経験があるから」という慢心
実務経験ルートの方に多いのが、「自分の現場でのやり方」を正解だと思い込んでしまうことです。
試験では「国が定める標準的な介護」や「制度上の正解」が問われます。
しかし、実際の現場では人員不足や独自のルールにより、教科書通りにいかないことも多々あります。
試験中に「うちの施設ではこうしている」という判断基準で回答を選ぶと、誤答になるケースが多発します。
試験はあくまで「教科書の世界」であることを意識し、現場での経験則に頼りすぎない姿勢が大切です。
不合格者の共通点2.過去問丸暗記による「読解力不足」
過去問学習は重要ですが、答えを丸暗記するだけでは不十分です。
近年の試験では、長文事例から利用者の状況を読み取り、適切なケアを判断する力が求められます。
理由を理解せずに覚えた知識では、出題形式が変わると対応できません。
「なぜその答えになるのか」を意識し、応用力を身に付ける学習が合格への鍵となります。
合格率を上げるための効果的な勉強法
では、確実に合格するためにはどうすればよいのでしょうか。
効果的な学習メソッドを紹介します。
過去問と模擬試験の活用方法
王道の対策は、過去問と模擬試験のフル活用です。
以下のサイクルで進めましょう。
- 過去問3〜5年分を解く:まずは出題のクセや頻出ワードを肌で感じます。
- 解説を熟読する:正解以外の選択肢が「なぜ間違いなのか」まで確認します。
- 弱点分野を特定する:0点科目になりそうな苦手分野を洗い出し、重点的に復習します。
このサイクルを回すことで、知識の定着率は格段に上がります。
解説を読む時間を惜しまず、理解を深めることが合格への近道です。
長文・応用問題対策としての「模擬試験」活用法
模擬試験は、本番を想定した時間配分を身に付けるために有効です。
筆記試験は1問あたり約1分40秒と余裕がないため、長文問題に時間をかけすぎない意識が大切です。
模試を通じて、設問を先に確認する、迷った問題はいったん飛ばすなど、自分なりの解き方を確立しておきましょう。
また、マークシート形式に慣れておくことで、試験当日の焦りを軽減できます。
合格後のメリット!資格取得で給料やキャリアはどう変わる?
苦労して試験に合格した先には、どのようなメリットが待っているのでしょうか。
ここでは、具体的な給料の変化やキャリアアップの可能性について解説します。
平均給与はどのくらい上がる?資格手当と処遇改善加算の影響
介護福祉士を取得すると、多くの職場で資格手当が支給され、毎月の給与水準が上がる傾向があります。
さらに、国の処遇改善に関する制度では、経験を積んだ介護福祉士を手厚く評価する仕組みが設けられており、安定した収入につながりやすい点も特徴です。
資格を持っていることが制度の対象要件になる場合も多く、長く働くほど無資格者との差が生まれやすくなります。
将来的な収入やキャリアの安定性を考える上で、資格取得は重要な意味を持つといえるでしょう。
現場リーダーやサービス提供責任者へのキャリアパス
資格取得は、キャリアの選択肢を広げるためのパスポートでもあります。
例えば、訪問介護事業所で配置が義務付けられている「サービス提供責任者(サ責)」は、介護福祉士などの有資格者でなければ就くことができません。
また、特別養護老人ホームなどの施設でも、ユニットリーダーやフロアリーダーといった役職に就くための要件として、介護福祉士の取得を定めている法人が一般的です。
現場のスペシャリストとして専門性を磨くだけでなく、管理職やマネジメント業務へステップアップするためにも、介護福祉士は必須の資格といえるでしょう。
介護福祉士国家試験に合格した後の手続きと登録
試験に合格しただけでは、「介護福祉士」として働くことはできません。
ここでは、意外と知られていない登録手続きについて解説します。
合格してもすぐに働けない?「登録申請」の流れと必要書類
介護福祉士は「名称独占資格」であり、社会福祉振興・試験センターの登録簿に登録されて初めて名乗ることができます。
合格証書が届いたら、速やかに以下の書類を揃えて申請を行いましょう。
・登録申請書
・登録免許税(収入印紙9,000円分)
・登録手数料(3,320円)の振替払込受付証明書
・戸籍抄本など(本籍地確認書類)
手続きを行っていない場合、資格手当の対象外となることもあるため、合格後はできるだけ早めに登録を済ませておくと安心です。
登録証が手元に届くまでの期間と就職活動の注意点
登録申請から登録証が届くまでには、通常1か月〜1か月半ほどかかります。
就職や転職活動では、登録証が未着でも、合格証書や登録申請の控えを提示すれば「登録見込み」として扱われるケースがほとんどです。
面接時に「現在申請中です」と伝えれば支障はないでしょう。
なお、正式に「介護福祉士」として業務に従事できるのは、登録完了後となる点には留意しておきましょう。
【不合格者向け】合格を目指すための対策
もし今回の試験で不合格だったとしても、決して諦める必要はありません。
まずは冷静に敗因を分析し、次回の合格に向けた戦略を立て直しましょう。
気持ちを切り替える!敗因分析と苦手科目の洗い出し
不合格通知が届いたときは、まず点数の内訳を落ち着いて確認してみましょう。
総得点があと一歩届かなかった場合は、基礎知識全体をバランスよく見直す必要があるかもしれません。
特定の科目で点数が伸びなかった場合は、その分野が苦手になっている可能性が考えられます。
また、時間が足りなかったと感じた場合は、長文問題への慣れや、模試を活用したペース配分の練習が今後の課題になります。
「なんとなく勉強不足だった」と片付けず、つまずいたポイントを具体的に整理することが、次につながる第一歩です。
弱点に合わせた学習計画を立てることで、次回はより落ち着いて試験に臨めるでしょう。
第38回から導入される「パート合格」制度とは?
2026年(第38回試験)からは、再受験者に有利な「パート合格」制度が導入される予定です。
これは試験科目を3つのパート(A・B・C)に分け、合格基準を満たしたパートについては、その結果を2年間持ち越せる(次回以降の試験で免除される)仕組みです。
・パート1:人間の尊厳と自立、人間関係とコミュニケーションなど
・パート2:介護の基本、コミュニケーション技術、生活支援技術など
・パート3:こころとからだのしくみ、医療的ケアなど
一度に全科目をクリアしなくてもよくなるため、働きながら受験する方にとって学習負担が大幅に軽減されます。
「今回はダメだったけれど、次回はこのパートだけ確実に取ろう」という戦略的な受験も可能になります。
新制度を味方につけ、諦めずに挑戦を続けましょう。
参照:公益社団法人社会福祉振興・試験センター「介護福祉士国家試験」
介護福祉士国家試験に関するよくあるQ&A
最後に、受験生からよく寄せられる疑問について回答します。
介護福祉士は「簡単すぎる」と言われるのは本当ですか?
ネット上などで「簡単すぎる」という意見を見かけることがありますが、決して簡単な試験ではありません。
そう言われる理由は、前述した通り「合格率が高いから」です。
しかし、受験資格を得るために実務経験3年と実務者研修(450時間)をクリアしなければならない時点で、高いハードルがあります。
その上で専門知識を問われる国家試験ですので、社会的信頼性のある難関資格の一つといえます。
実務経験のみで独学合格は可能ですか?
はい、独学での合格は十分に可能です。
実際に多くの方が働きながら学習し、合格を果たしています。
ただし、完全に一人で学習を進める場合は、法改正の動きや最新の介護技術に関する情報を把握しにくくなることもあります。
市販のテキストや過去問アプリを活用しつつ、分からない部分は職場の先輩に聞くなどして、情報のアンテナを張っておくことが大切でしょう。
まとめ
介護福祉士国家試験の合格率はおおむね70〜80%で推移しており、正しい準備を重ねれば過度に不安を抱く必要はありません。
ただし、第37回試験が示したように、出題傾向の変化や難易度の上昇が起こる可能性は常に意識しておく必要があります。
合格への近道となるのは、実務経験だけに頼らず、試験を意識した学習を計画的に進めることです。
特定の分野に偏らず、すべての科目をバランスよく押さえることが大切です。
また、過去問題を繰り返し解くことで、知識の定着だけでなく、試験本番で求められる実践的な解答力も養われていきます。
試験に合格すれば、収入面の向上やキャリアの選択肢が広がるなど、大きなメリットが得られます。
正しい知識と対策を積み重ね、自信をもって合格を目指してみてください。

