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26安全な入浴介助の方法とは?利用者にも職員にも優しいケアのポイントを解説

入浴介助は「三大介護」の一つとされ、利用者のQOLを向上させる大切な業務です。

一方、高齢者の入浴中の死亡事故は年々増えています。

厚生労働省「人口動態統計」によると、令和5年における高齢者の「不慮の溺死及び溺水」は約8,270人と、交通事故死の4倍近い数値となっています。

主な原因は、ヒートショックや長湯による熱中症によって引き起こされる「意識障害」です。

そこで本記事では、安全で快適な入浴介助の方法や、注意点について解説します。

高齢者の介護に携わる方は、ぜひ参考にしてみてください。

出典:消費者庁「高齢者の事故 ―冬の入浴中の溺水や食物での窒息に注意―

お風呂の効果と入浴介助の役割

高齢者にとってのお風呂は、単なる習慣というだけにとどまりません。

お風呂には、心身の健康に大切な効果が詰まっています。

知っている方も多いかもしれませんが、一緒に再確認しておきましょう。

身体の保清

高齢者は若い人より活動量が少ないため、汗をかいていないと思われるかもしれません。

しかし、人間は寝ている間にも一晩で200mlの汗をかいているといわれています。

汗をかくことで皮脂がたまると、かゆみや乾燥を引き起こすとともに、細菌の貯留を許すことになり、感染症への罹患リスクを高めます。

清潔を保つことは、体臭や感染症を防ぎ、健康な毎日を維持するに当たり、欠かすことのできないものなのです。

リラクゼーション効果

世界的に見ても、毎日お湯に浸かるという文化は日本独自のものといえます。

お風呂の水圧や温熱効果によって血管が拡張され、血の巡りが良くなることで筋肉がほぐれます。

すると、副交感神経が活発になり、リラックスした気分を感じられるでしょう。

シャワーでも同様の効果はありますが、入浴のほうがはるかに高い効果を得られるため、可能であれば入浴することをおすすめします。

全身の皮膚状態の確認

全身を観察できる機会は、入浴以外ではほとんどありません。

高齢になると、些細な衝撃で皮膚が剥離したり、内出血を起こしたりします。

また、寝たきりの高齢者は、褥瘡(じょくそう)の発生にも注意が必要です。

注意すべき部位は、仙骨部分のみではありません。

踵や肩甲骨の骨が突出している箇所にも、褥瘡は発生する可能性があります。

このような皮膚状態の変化をしっかりと観察できる機会は、入浴をおいてほかにないため、介護の現場において入浴は重要なケアといえるでしょう。

入浴介助前の準備

実際に入浴介助を行う前に、事前に準備しておけるものは用意しておきましょう。

入浴は心身ともにリフレッシュできる機会ですが、持病や健康状態によっては、身体に大きな変調をきたす可能性もあります。

そのため、スムーズかつ安全に行えるよう、事前に準備を整えておくことはとても大切なのです。

なお、トイレも入浴前に済ませておきましょう。

浴室の準備

まずは、お風呂場の準備をしましょう。

浴槽にお湯を入れながら、シャワーチェアやシャンプー類、脱衣所には服を入れるかごなどを用意します。

また、併せて室温にも注意しましょう。

急激な温度変化は、血圧の上昇と下降を引き起こし、一時的に脳の血流を減少させて、ヒートショックを起こす可能性があります。

特に、冬場は浴室と脱衣所をしっかりと温め、服を脱いでも寒くないようにしておきましょう。

入浴介助に必要なもの

次に、お風呂の介助で準備しておくものを確認しましょう。

タオル・着替え・足拭きマット・ドライヤーは、必須となります。

お風呂の後は爪が柔らかくなっているため、爪切りもあると良いでしょう。

また、入浴後に水分補給ができるよう、飲み物も用意してあると理想的です。

入浴前の体調確認

入浴は心身の健康をもたらしてくれますが、同時に温度変化による身体の変調にも注意が必要です。

そのため、入浴前には利用者のバイタルサインを確認し、必要に応じて入浴を中止する、または清拭に切り替えるなど、適切に判断しましょう。

なお、入浴を中止するバイタルには、はっきりとした基準はありません。

施設や事業所ごとに、または利用者の普段のバイタルによって判断が異なりますが、一般的に入浴を中止する判断基準は、以下のとおりです。

収縮期血圧160mmHg以上、または100mmHg以下
拡張期血圧100mmHg以上、または50mmHg以下
脈拍100回/分以上、または50回/分以下
体温37.0℃以上

ほかにも、呼吸の乱れや深い傷の有無、風邪や脱水の症状など、健康・身体状況に何かある場合は、看護職員や医師の指示を仰いでください。

入浴介助の具体的な手順

ここでは、実際の入浴介助の手順を見ていきましょう。

あらかじめ手順を頭に入れておくことで、スムーズな介助が可能となり、利用者の身体への負担も少なくできます。

1.脱衣

浴室に着いたら、イスに座った状態で脱衣する介助を行います。

着脱の基本は脱健着患となり、脱ぐときは健側からにしましょう。

また、できることは利用者ご自身に行ってもらうのも、自立支援の大切な考え方です。

2.シャワーチェアに移る

服を脱いだら、浴室に移動しましょう。

車イスならば、入れるところまで近づいてから、シャワーチェアへ移乗します。

浴室の床は濡れていることが多く、はだしでは冷たく感じやすいと同時に、足を滑らせてしまう危険性にも注意しましょう。

そこで、あらかじめ床やシャワーチェアにお湯をかけて温めておくと、利用者にかかる負担を減らせます。

3.かけ湯・洗髪・洗身

急にお湯をかけると、心臓へ負担がかかったり、血圧変動を招いたりするため、湯温を確認してもらって足元からゆっくりかけます。 

その後、少しずつ上半身にお湯をかけたら、首筋にしばらくお湯を当てましょう。

太い血管がある首筋を温めることにより、血管が拡張され、心身ともにリラックスした状態になりやすくなるためです。

十分にお湯をかけたら、頭髪にもお湯をかけて洗髪します。

このとき、髪だけでなく頭皮まで丁寧に洗い、よくすすいだ後は、顔や頭の水分を拭き取りましょう。 

そして、最後に全身を洗います。

特に決まった順番はありませんが、最初に顔や上半身を洗い、汚れのたまりやすい足先や陰部、臀部は最後に洗うようにしましょう。

4.浴槽に入る

十分に身体の泡を流したら、お湯に浸かりますが、まず先に職員が湯温を確かめましょう。

手先の体温は、環境によって変化しやすいことから、温度を正確に測れません。

そのため、前腕部などで確かめます。

浴槽をまたぐ際、麻痺がある場合は健側からが原則です。

麻痺側から入ると、湯温が分からない場合があるためです。

立位が不安定であれば、無理をせず、一度バスボードに座ったり、シャワーチェアを浴槽に近づけて座ったまま片足ずつ入れたりします。

入浴時間は5分程度を目安にし、長湯にならないように注意しましょう。

5.浴槽から出る・上がり湯

浴槽内で立ち上がる際は、膝を曲げて両足を引き、おしりを浮かせます。

浮力を利用すると、スムーズに上がることができるでしょう。

片麻痺の方も同様に、健側の足を引いておしりを浮かせ、健側の足に体重が乗るように介助します。

浴槽から出るときも健側からが望ましいですが、身体を180°回転させないといけなくなるため、患側からでも構いません。

入るときは立ったままでまたげても、入浴による疲労から、出る際は難しい場合もあります。

そのようなときは、バスボードなどを有効に活用しましょう。

最後に、少し熱めのシャワーで上がり湯をすることにより、湯冷めや血圧の変動を防ぐことが可能です。

6.脱衣所へ移動する

脱衣所に出る前には、ある程度体を拭いておきます。

脱衣所の足拭きマットでも、足裏の水分を拭き取りますが、体から流れ落ちてくる滴で床が濡れていては意味がありません。

また、湯冷めを防ぐためにも、温かい浴室内である程度体の水分を取り除いておくと、この後の工程がスムーズです。

7.保湿剤や軟膏類の塗布

体の水分を拭き取ったら、利用者がお持ちの保湿剤や軟膏を塗ります。

一般的には1円玉台、チューブの軟膏ならば人差し指の第一関節くらいの量が、両手分程度の面積に相当します。

多すぎても、少なすぎても十分な効果は得られないため、適切な量をしっかりと確認してください。

また、軟膏やクリームの種類によっては、医師から塗布量を指示されている場合もあります。

例えば、ラミシールなどの抗真菌剤は、患部に薄く塗るのがポイントです。

8.着衣・体調確認・水分補給

着衣時も脱健着患を意識し、患側から着るようにしましょう。

脱ぐときと同様、自立支援を意識した上で、利用者自身にできることはしてもらうことが大切です。

入浴後は体の水分をしっかりと取り、体調に変化はないか確認しましょう。

入浴介助の際に介助者が気をつけておくこと

2025年6月1日に労働安全衛生規則が改正され、職場内での熱中症対策の強化が叫ばれています。

お風呂での介助は利用者だけでなく職員にとっても熱中症をはじめ、さまざまなリスクがつきまとうものです。

職員が入浴介助にあたる際の注意点をまとめましたので、参考にしてみてください。

暑さ対策・脱水対策

厚生労働省「職場内における熱中症対策の強化について」では、31℃以上の環境で連続1時間以上、または1日4時間以上の作業を行う場合、熱中症への理解と対応の周知が義務付けられました。

浴室内は31℃を超えることも多く、長時間の入浴は脱水の恐れがあります。

そのため、入浴前後の水分補給は、利用者のみならず職員も適宜取るようにしましょう。

また、体調不良を感じたときは、管理者に相談したり、業務を代わってもらうことを検討したりする必要があります。

出典:厚生労働省「職場内における熱中症対策の強化について

感染症や手荒れ対策

お風呂での介助を行う職員には、感染症や手荒れのリスクがあります。

皮膚の薄い高齢者には、水虫の保菌者も多いため、職員も水虫の感染に注意が必要です。

感染のリスクを減らすためにも、入浴介助後は足を石鹸などでよく洗いましょう。

特に指の間もしっかりと洗うことが大切です。

また、入浴時の石鹸や清掃時の洗剤で手指の油分が抜け、手の乾燥や手荒れを引き起こすケースも多く見られます。

手荒れ対策として、ハンドクリームを持参し、適時保湿に努めましょう。

例えば、お気に入りの香りがするハンドクリームは心を落ち着かせ、気分良く業務が行えるようになるはずです。

焦らない・焦らせない

1日に複数の入浴介助を行うと、次の業務を意識して焦りがちです。

しかし、浴室は濡れており滑りやすく、露出した皮膚も傷つきやすいため、いつも以上の安全配慮が欠かせません。

週に2回ほどしか入浴できない利用者にとっても、職員が焦っていては、十分に入浴時間を満喫することができません。

ただし、長時間の入浴は身体の変調の原因にもなりますので、必要以上に焦らないことも大切ですが、かえって時間がかかり過ぎないよう、スムーズな介助を行えるようにも心がけましょう。

入浴介助にあると便利な介護用品

お風呂の介助において、あると便利な介護用品をご紹介していきます。

皆様の現場でも利用可能なものがあるかもしれませんので、ぜひ参考の上で活用してみてください。

シャンプーハット

シャンプーハットというと、子ども用のアイテムと思われるかもしれませんが、大人向けのものも販売されています。

シャンプーの際、顔に水がかかったり、耳に水が入ったりするのを不安に思う利用者もいます。

また、認知症などの症状により、シャンプーを流す際に目を閉じていただけない方にも、シャンプーハットがあると安心です。

職場に上記に該当するような方がいらっしゃいましたら、導入を検討してみても良いかもしれません。

浴槽用手すり

在宅などの介助において、浴槽をまたぐ際に手すりがないと、高齢者がバランスを崩して転倒するリスクは高くなり、介助の難易度を引き上げてしまいます。

浴槽用の手すりは、浴槽のふちに取り付けるタイプで、しっかりと安定しており、後付けや取り外しが可能です。

手すりの取り付け工事ができない場合でも利用は可能ですが、浴槽の形状によっては取り付けが難しいケースや、安定しない場合もあります。

そのため、導入を検討する際は、事前に専門業者へ相談してみましょう。

浴槽内の高さ調節台

浴槽の底は、浴室の床よりも低い位置となっていることが多いでしょう。

そのため、浴槽から出る際には、高く足を上げる必要があることから、踏み台があると便利です。

体の小さい利用者や半身浴の際には、浴槽内で調節台の上に座ることもできます。

また、浴槽内で足が浴槽のふちまで届かないと、入浴時の姿勢が安定しません。

調節台を浴槽内に横向きに設置すると、足裏をつけることができ、安定性が向上します。

このように、さまざまな使い方ができるため、高さ調整台は一つあると重宝するでしょう。

介助ベルト

服を着ていない利用者の移乗介助は、服を着ているときよりも滑りやすいため、介助ベルトを装着してもらうことがあります。

介助ベルトには、腰回りに4カ所の持ち手があり、移乗時のグリップを安定させることが可能です。

また、マジックテープで体に固定でき、簡単には剥がれないように作られています。

まとめ

高齢者にとってのお風呂は、清潔を保つのみならず、リラックス効果や皮膚状態の確認といった大切な役割を担っています。

一方、浴室内は転倒やヒートショック、脱水などのリスクが潜む場所でもあります。

そのため、入浴前の準備や体調確認、適切な手順に基づいた介助が欠かせません。

介助者自身も、熱中症や感染症、手荒れなどのリスクにさらされるため、予防・対策・自己管理が必須です。

必要に応じて介護用品を活用し、安全で安心できる入浴介助に努め、利用者が快適で楽しめる時間を提供することが、入浴のもっとも大切な役割であるのではないでしょうか。