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更新日:
138

認知症の方の食事拒否はなぜ起こる?考えられる原因と適切な対応を解説

認知症の方の介護をしており、「突然食事をとらなくなった」「ご飯を勧めても食べようとしない」とお悩みではありませんか。

食事を拒否する原因は多岐にわたるため、まずは本人の様子をしっかりと観察し、根本原因を把握することが大切です。

本記事では、認知症の方における食事拒否の原因と対応について詳しく解説します。

薬や点滴、入院による治療の可否についてもご説明しますので、ぜひ最後までご覧ください。

認知症の方に見られる食事拒否の主な原因

認知症の方に見られる食事拒否の原因は、認知機能の低下や体の不調などさまざまです。

ここでは、食事拒否を引き起こす主な原因を8つ取り上げてご紹介します。

認知症の影響(失認)で食べ物が認識できなくなっている

認知症が進行すると、「失認」という症状が現れて食事拒否につながることがあります。

失認とは、五感が正常に働いているものの、脳の損傷によって見聞きしたものや触ったものを正しく認識できなくなる症状のことです。

この症状の影響で目の前にあるものが食べ物かどうか分からなくなり、食事に手を伸ばしたり口に入れたりするのを拒むケースが散見されます。

さらに、食べ物の色や形を見て「危ないもの」と誤認することで、恐怖心や警戒心が強まり、食事を極端に避けてしまうことも珍しくありません。

「食卓についてもなかなか食べ始めない」「食べ慣れたメニューでも口に入れるのを嫌がる」などの様子が見られる場合は、失認が原因である可能性があります。

認知症の影響(失行)で食べ方が分からなくなっている

先述した失認のほか、「失行」という症状が原因で食事の拒否に至ることもあります。

失行とは、運動機能に問題がないにもかかわらず、脳の損傷によって目的の動作ができなくなる症状のことです。

この症状が現れると、本人は食事をしたいと思っていても、箸の使い方や食事の手順(食べ物を口に入れるまでの動作)が分からなくなります。

そのため、周囲の方からは食事を拒んでいるように映るかもしれません。

「食器に触れたまま手が止まっている」「食事中に突然動きが固まる」などの様子が見られる場合は、失行によって食べ方が分からなくなっている可能性があります。

認知症の影響(BPSD)で食欲不振が起きている

認知症に伴う行動や心理症状のことを「BPSD」といいます。

このBPSDの影響で、本人が強い不安を感じたり、抑うつ状態になったりすることがあり、結果として食欲不振を招くケースも少なくありません。

食欲不振とは、空腹感自体はあるものの、「何かを食べたい」という意欲が湧いてこない状態を指します。

つまり、BPSDによる気分の落ち込みが引き金となり、食欲が低下することで食事拒否を招く場合があるのです。

加齢によって嚥下(えんげ)機能が低下している

高齢者の中には、加齢に伴う嚥下機能(飲み込む力)の低下が原因で、食事を避ける方もいます。

嚥下機能とは、飲食物を口から胃へと送り込む一連の働きのことです。

加齢によって嚥下機能が低下すると、食事中に何度もむせたり、食べ物を吐き出したりしやすくなります。

これは、舌の動きが鈍くなったり喉の筋肉が衰えたりすることで、口の中に入れたものをスムーズに飲み込めなくなるためです。

こうした体験が重なると、食事の時間を迎えるたびに「また同じことを繰り返すのではないか」という不安が生まれ、食事そのものを拒絶する悪循環に陥る場合があります。

歯周病や虫歯などの口腔トラブルが起きている

認知症の方が食事を拒む背景には、歯周病や虫歯といった口腔内のトラブルが隠れているパターンも想定されます。

口腔トラブルとは、文字どおり口内に生じるさまざまな病気や不調のことです。

何らかの口腔トラブルを抱えていると、ものをかむときに強い痛みや違和感を覚え、食事そのものを苦痛に感じるようになります。

このようなストレスが食欲を減退させ、食事拒否を引き起こすことも珍しくありません。

また、入れ歯を使用している方は、「噛み合わせがしっくりこない」などの理由で食べ物をうまく嚙み切れず、ストレスを感じているケースも目立ちます。

入れ歯に起因する不快感も食欲低下の要因となるため、特に高齢者の介護においては口元の様子に気を配らなければなりません。

薬の副作用や体調の変化で食欲が低下している

認知症の治療やほかの疾患に対する薬を服用している場合、その副作用が食欲低下を引き起こしている可能性も視野に入れる必要があります。

例えば、向精神薬の服用では「眠気」や「口の渇き」といった副作用が強く出ることがあり、これが食欲不振のきっかけになる場合もあるのです。

また、認知症や高齢者の方の食欲は、ちょっとした体調の変化やストレスによって大きく左右されます。

薬を服用している場合でも、体調不良によって食欲が低下している可能性もあるため、異変を感じた際は早めに医療機関を受診しましょう。

食事をとる環境の影響を受けている

個人差はありますが、認知症の方は環境からの刺激を強く受ける傾向があります。

そのため、スムーズに食事が進まない場合は、食事をとる環境そのものに原因が潜んでいるかもしれません。

中には「テレビの音が気になって落ち着かない」「部屋の照明が明るすぎる」などの理由から、食事を拒む方もいます。

介護者にとっては些細に思えることであっても、本人にとっては大きな負担となり得るため、その方の性質に合わせた環境づくりも心がけてみてください。

食事の提供内容に問題がある

認知症の方が提供された食事に不満を感じ、食欲が湧かずに手をつけないということも考えられます。

具体例としては、「好みのメニューではない」「料理の見栄えが良くない」といったケースが挙げられるでしょう。

どれほど栄養バランスに優れた食事であっても、本人の好みに合わない味付けであったり、苦手な食材が含まれていたりすると、なかなか食欲は湧かないものです。

加えて、細かく刻まれた食事の見た目がネガティブな印象を与え、「何を食べさせられているのか分からない」という不信感から、食事拒否につながる可能性も否定できません。

認知症の種類別に見る食事拒否の理由

認知症には、アルツハイマー型認知症をはじめとするさまざまな種類が存在します。

種類ごとに症状の特徴が異なり、食事を拒否する背景や理由にも違いが生じるため、この機会に整理しておきましょう。

アルツハイマー型認知症の場合

アルツハイマー型認知症とは、脳内に「アミロイドβ(ベータ)」などの異常なたんぱく質が蓄積し、脳の神経細胞が破壊されることで発症する認知症です。

このタイプにおいて食事拒否が起こる主な要因として、脳全体の萎縮に伴う認知機能の低下が挙げられます。

アルツハイマー型認知症では、目の前の飲食物を認識できなくなる「失認」や食具の使い方が分からなくなる「失行」などの症状が現れやすくなります。

これらが引き金となって食事拒否に至ることも珍しくありません。

レビー小体型認知症の場合

レビー小体型認知症は、脳内に「レビー小体」と呼ばれる異常なたんぱく質が蓄積し、脳の神経細胞がダメージを受けることで発症する認知症です。

このタイプには、パーキンソン病に似た症状が現れやすいという特徴があります。

手の震えや筋肉のこわばりなどが原因で、スムーズな食事動作が困難になることも多々あります。

また、実際には存在しないものが見える「幻視」という症状により、料理の中に異物が混入していると思い込み、警戒心から食事を拒むケースも少なくないでしょう。

脳血管性認知症の場合

脳血管性認知症とは、「脳卒中(脳梗塞や脳出血)」の発症に伴い、脳の神経細胞に必要な栄養や酸素が供給されなくなることで生じる認知症です。

このタイプの食事拒否には、脳の損傷に起因する特定部位の機能障害が深く関わっています。

脳血管性認知症では、脳卒中によって「手足の麻痺」や「嚥下障害」などが引き起こされ、自力での食事が難しくなるケースが目立ちます。

加えて、自発性や意欲の低下に伴い、食への関心が薄れて食欲不振に陥るリスクがある点も頭に入れておきましょう。

認知症の方が食事拒否をしたときの具体的な対応

認知症の方が食事拒否をした場合、介護者はどのように対応すれば良いのでしょうか。

ここでは、食事拒否が見られた際の具体的な対応方法を6つ取り上げてご紹介します。

状況に応じて声かけや介助を行う

認知症の方の中には、失行などの症状により食事の進め方が分からなくなる方もいらっしゃいます。

そのため、本人の様子を確認しながら声かけや介助を行うと良いでしょう。

目の前の料理を食べ物だと認識できている場合は、介護者が食べ方を説明したり実際に見せたりすることで、本人がそれを真似して食事をしてくれることもあります。

自力で食事をするのが難しい場合には、本人のペースに寄り添いながらさりげなくフォローしていきましょう。

本人の体調を確認する

認知症特有の症状だけでなく、口腔内のトラブルや体の不調も食事拒否を引き起こす大きな要素となります。

特に高齢者は、歯周病や虫歯などの口腔トラブル、病気やストレスに起因する体調不良が生じやすいため、日頃からの健康チェックが欠かせません。

本人の様子を観察しつつ、「定期的に歯科検診を受ける」「水分補給を促して排便コントロールを図る」といった適切なケアを行いましょう。

食事をとれない、進まないという状況を解決できることもあります。

認知症の方にとっては自身の不調を言葉で伝えるのが難しいため、周囲の介護者が早期に異変に気づけるよう気を配っておくことが求められます。

適度な運動を取り入れる

認知症や高齢者の方は活動量の低下に伴い、食事の時間になってもお腹が空かず、箸が進まないことがあります。

体を動かす機会が少ない場合には、日々の生活でストレッチや散歩といった無理のない運動を取り入れてみましょう。

適度な運動は自然な空腹感を促すため、食欲を呼び起こす上で効果的です。

運動に苦手意識がある方には、できる範囲で役割(新聞の受け取りやテーブル拭きなどの簡単なお手伝い)を担ってもらうなどの工夫も検討してみてください。

落ち着いて食事ができる環境を整備する

認知症の方は周囲からの刺激に敏感になりやすく、食事の途中で集中力が切れることが多々あります。

結果として、食事拒否につながるケースも多いため、落ち着いて食事ができる環境を整備することが大切です。

一例として、音に敏感な方であれば「食事中はテレビを消す」「個別の静かなスペースを確保する」といった工夫を施すことで、食事への意識を保ちやすくなります。

集中を妨げる原因は一人ひとり異なるため、本人にさりげなく尋ねたり、日頃の動作を確認したりして要因を探っていきましょう。

食事のメニューや調理方法などを変更する

認知症特有の症状に加えて、本人の好みと料理の内容がマッチしていない事実も食事拒否の引き金となり得ます。

そのため、食事のメニューや調理方法を工夫することで「食べてくれない」という状況を打開できる場合もあるのです。

具体的なアプローチとして「可能な範囲で好物を取り入れる」「食べやすいサイズや柔らかさに調整する」などが効果を発揮します。

こうした配慮によって食事に関するストレスを取り除けば、料理への関心を取り戻してもらい、意欲的に食事を楽しんでもらえるようになるかもしれません。

なお、認知症が進行して失認が生じると、料理と食器の柄との識別が難しくなる場面が増えてきます。

盛り付けを工夫したとしても、失認の影響で「見た目が良くない」と感じる恐れがあるため、食事の際はシンプルなデザインの食器を利用する手法もおすすめです。

本人の意思やペースを尊重する

認知症の方が食事を拒んだ際は、何よりも本人の意思や食べるペースに寄り添う対応が重要となります。

感情的に否定したり、無理やり口へ運ぼうとしたりすると、本人に大きな精神的負担を与えかねません。

さらに、食事に対して不快な記憶が定着すると、毎日の食事タイムが苦痛な時間に変わり、かえって拒絶反応が強まる事態も想定されます。

強要は逆効果をもたらす危険性が高いため、本人の心境を尊重しながら穏やかに改善を目指していきましょう。

認知症の方の食事拒否は薬で治療・改善できる?

結論からお伝えすると、認知症の方の食事拒否そのものを直接解消するような特効薬は存在しません。

したがって、食事拒否を改善していくには「体調管理の徹底」や「食事内容の工夫」をはじめとする非薬物的なアプローチが基本となります。

ただし、以下のような症状が引き金となって食事拒否が起きているケースでは、適切な投薬によって食欲の回復を図れる場合もあるでしょう。

  • 精神症状(不安感や抑うつ状態など)
  • 便秘
  • 感染症

薬はあくまでサポート的な役割を果たすものに過ぎないため、まずは生活環境の調整や介護ケアの見直しを行うステップを優先させましょう。

認知症の方の食事拒否について知っておきたい3つのこと

認知症の方に見られる食事拒否は、本人のコンディションや症状の進行具合と密接に結びついているものです。

ここでは、認知症の方の食事拒否に関して、あらかじめ把握しておきたいポイントを3つご紹介します。

食事拒否と寿命の関係

認知症は、時間の経過とともに緩やかに進行する症状であり、末期に差し掛かると自力での食事摂取が困難になります。

症状の進行に伴って食事を一切とれなくなった状態(絶食状態)は、「寿命が近づいているサイン」と判断されるのが一般的です。

食事をとれない状況が長引いて体力や身体機能が著しく衰えた場合、元の状態へ回復する見込みは極めて低くなります。

したがって、家族としては落ち着いて看取りを迎えるための心の準備を進めた方が良いといえるでしょう。

人の死は極めてデリケートな事柄であり、仮に元気な段階であったとしても、「人生の最期をどう迎えるのか」という話題は切り出しにくいものです。

しかし、本人ならびに家族が納得のいく決断を下すためには、元気なうちに最期の迎え方について意向を共有しておく配慮が欠かせません。

栄養補給の方法

認知症の方が食事を一切拒絶する場合には、「胃ろう」や「点滴」を活用して栄養補給を図ることもできます。

各手段の概要は以下のとおりです。

栄養補給の方法概要
胃ろう胃に小さな穴をあけてチューブを挿入し、直接栄養や水分を注入する手法
点滴静脈に針やカテーテルを挿入し、血管を通して栄養・水分・薬剤を補給・投与する手法

これらの手段を用いれば、自力で食事をするのが難しい状態であっても、身体に必要な栄養を届けることが可能です。

ただし、胃ろうの造設にあたっては「外科手術」を伴うため、本人の身体的な負担や術後の生活への影響を慎重に見極めなければなりません。

一方、点滴は血管を通して栄養や水分を補給するため、消化器官に過度な負担をかけずに済むメリットがあります。

胃ろう・点滴はいずれも生命を維持・延長させる手立てとなります。

本人や家族の意向を十分に尊重した上で納得のいく選択をご検討ください。

入院治療の可否

認知症の方が食事拒否に伴って体調を崩した場合には、入院して治療を受けることも可能です。

ただし、一般的な医療機関では、認知症特有の行動・心理症状への対処が難しいことから、入院の受け入れを断られるケースも少なくありません。

認知症の方の入院治療を希望する際は、専門医が常駐する病院、あるいは認知症ケアに特化した専門施設へ事前に相談してみることをおすすめします。

まとめ

今回は、認知症の方における食事拒否の主な原因と具体的な対応策について解説しました。

認知症の方が食事を拒む背景には「失認や失行」「嚥下機能の衰え」「口腔内のトラブル」などさまざまな要因があります。

また、その日の体調や周囲の環境に影響されている事例も多いため、本人の様子をしっかり観察した上で適切な対応を検討することが大切です。

「どう接すればいいのか分からない」「自分だけでは抱え切れない」とお困りの方は、専門職に相談したり、介護サービスを導入したりする選択肢も検討しましょう。

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