介護の仕事を始める方にとって、「どんなキャリアアップができるのか」は気になるポイントではないでしょうか。
キャリアアップを目指すことで、給料アップや役職昇格、働き方の選択肢が広がるなど、多くのメリットがあります。
本記事では、介護職のキャリアアップ方法を状況別に分けて詳しく解説します。
介護のキャリアアップ方法とは?
介護のキャリアアップとは、介護に関する知識やスキルを向上させるために、資格や技術を取得することです。
また、スタッフや施設の管理を担うこともキャリアアップの一つです。
介護業界における具体的なキャリアアップには、以下の方法が挙げられます。
| ●新たな資格や高度な資格を取得する ●リーダーや主任、管理職といった役職に就く |
最近ではデジタル技術の多様化により、ICTスキルの取得もキャリアアップに含まれるようになってきています。
介護業界の一般的なキャリアパス
介護業界では、自分が持っている資格やスキルによって、目指せるキャリアパスが明確になっています。
具体的には、以下のキャリアパスを踏むのが一般的です。
- 未経験から取得できる資格を取得し、実務経験を積む
- 国家資格の取得やリーダーや主任といった役職経験
- 専門性のある仕事や資格の取得、または管理職を目指す
このように、段階的にスキルと経験を積み重ねることで、自身の目標に応じたキャリアを着実に描いていくことが可能です。
目指す働き方によってキャリアアップは異なる
介護業界におけるキャリアアップは、目指したい働き方によっても異なります。
介護の仕事を大きく分けると、以下の3つに分けられます。
- ●介護現場で働く
- ●ケアマネジャーとして働く
- ●生活相談員として働く
介護のキャリアアップは、現場で活躍できる資格や、相談員として活躍できる資格など、目指す働き方によって方法が異なります。
介護でキャリアアップすると得られるメリット
介護の仕事は無資格・未経験でもできる仕事はありますが、仕事内容が身体介助や生活援助などの基本的な業務に限られることが多いため、キャリアアップが重要となります。
また、将来的に得られるメリットも多数あります。
- ●給料がアップする
- ●スキルが向上する
- ●働き方が選びやすくなる
- ●転職の際に有利になる
メリットとしては、給料アップやスキルアップはもちろん、働ける幅が広がることで、長く安心して働ける環境を築くことにもつながります
未経験から介護職でキャリアアップする方法
介護業界は未経験からでもキャリアアップできる点が魅力の一つです。
ここでは、未経験から始められる資格や研修、そしてその後に目指すキャリアアップの流れについて紹介します。
未経験で取得できる資格や研修
まず、未経験からでも取得できる資格や研修は以下のとおりです。
- ●介護職員初任者研修
- ●介護福祉士実務者研修
- ●社会福祉主事任用資格
それぞれの特徴や取得方法を詳しく紹介していきます。
<介護職員初任者研修>
介護職員初任者研修(旧ヘルパー2級)は、介護の仕事を始める方が最初に取得したい資格です。
似た研修に「認知症介護基礎研修」がありますが、初任者研修を修了すれば免除されます。
取得方法は、スクールに通学またはオンラインで130時間(10項目)のカリキュラムを修了し、試験に合格することです。
<介護福祉士実務者研修>
介護福祉士実務者研修(旧ヘルパー1級)とは、介護職員初任者研修よりもさらに高いスキルや知識を習得するための資格です。
取得することで、現場で活躍できるスキルはもちろん、医療的ケアが行えるようになったり、サービス提供責任者などの役職に就いたりできるようになります。
取得方法は、実務者研修講座を開催しているスクールに、通学もしくは通信コース(通信+通学)にて、20科目450時間のカリキュラムを修了すれば取得可能です。
なお、試験については実施義務がなく、実施しないスクールもあれば、学習内容を確認するために実施するスクールもあります。
<社会福祉主事任用資格>
社会福祉主事任用資格は、福祉事務所や障害福祉サービス事業、在宅医療などで、利用者さんやそのご家族に対して相談業務ができる資格です。
取得方法は、以下の5つが挙げられます。
- ●大学・短大で指定科目を履修し卒業する
- ●指定の通信教育課程を修了する
- ●都道府県の講習会で指定科目を修了する
- ●社会福祉主事養成機関で指定の科目を修了し卒業する
- ●「社会福祉士」や「精神保健福祉士」といった国家資格を取得する
なお、社会福祉主事任用資格は、「社会福祉主事」に任用されるための資格であり、正確には資格取得後に、地方公務員試験に合格する必要があります。
<そのほかキャリアアップが期待できる資格>
未経験の方がキャリアアップを目指す場合、次のような資格もおすすめです。
- ●喀痰吸引等研修
- ●認知症介護基礎研修
- ●福祉用具専門相談員
- ●福祉住環境コーディネーター
なお、喀痰吸引等研修と認知症介護基礎研修は、初任者研修や実務者研修を取得していれば免除されます。
業務内のキャリアアップ目標
未経験で介護業界に入る方は、業務内でのキャリアアップも目指しましょう。
具体的な目標例は次のとおりです。
| ●職場が整理整頓され、清潔な環境を保てている ●利用者や同僚に丁寧な言葉遣いで対応できる ●事業所の方針やルールを理解し、実践できている ●利用者の状態を把握し、支援内容に反映できている ●計画書や指示を確認し、手順どおりに業務を行っている ●介護や生活援助の基本技術を身に付けている ●体調や様子の変化に気づき、適切に対応できる ●事故や異変を正確に把握し、報告・相談ができる ●依頼された仕事を終えた後、確実に報告している |
なお、無資格や未経験で役職に就くことはできませんので、少しずつステップアップしていきましょう。
国家資格を目指す方向けの介護キャリアアップする方法
初任者研修や実務者研修などの資格を取得した方は、次のステップとして国家資格の取得を目指します。
国家資格を取得することで、より高度な専門知識や技術が身に付き、介護現場での役割も広がります。
ここでは、主に目指せる資格とその生かし方について紹介します。
取得できる資格や研修
主に目指せる国家資格は次の2つです。
- ●介護福祉士
- ●社会福祉士
これらの資格を取得すると、リーダーや主任などの役職も目指せます。
<介護福祉士>
介護福祉士は、介護現場のスペシャリストといえる資格です。
取得すると、給料アップや現場での指導、管理職への昇進など、仕事の幅が広がります。
取得方法は、下記のいずれかを満たして、国家試験に合格できれば取得できます。
| ●指定の大学・短大・専門学校を卒業 ●実務経験3年以上、実務者研修もしくは介護職員基礎研修+喀痰吸引等研修を修了する ●福祉系高校を卒業 ※場合によっては9カ月の実務経験が必要 |
<社会福祉士>
社会福祉士は、介護や福祉業界で相談業務を担うスペシャリストです。
ケアマネジャーと混同されがちですが、ケアマネジャーは介護サービスの調整、社会福祉士は生活全般の相談支援を行う点が異なります。
取得方法は、下記のいずれかの条件を満たして、国家試験に合格すれば取得可能です。
| ●福祉系の大学・短大・専門学校を卒業し、相談業務を0~2年経験 ※指定科目を履修していない場合は短期養成施設で6カ月の受講が必要 ●老人福祉指導主事や知的障害者福祉司などの実務を4年以上経験+短期養成施設で6カ月の受講 ●一般大学・短大を卒業し、相談業務を0~2年経験+短期養成施設で1年の受講 ●相談援助業務4年経験 |
<そのほかキャリアアップが期待できる資格>
国家資格を目指す方には、次のような資格もおすすめです。
- ●認知症介護実践者研修
- ●認知症介護実践リーダー研修
これらは認知症に特化した資格で、認知症の方に高いサービスを提供したい方に向いています。
業務内のキャリアアップ目標
国家資格を目指す方は、3~4年目を目安に次の業務目標を持つとよいでしょう。
| ●ほかの職員と連携し、協力して業務を行う ●サービス提供責任者の業務を一部補助できる ●ケアマネや外部機関と適切にやりとりできる ●新任職員に業務を説明できる ●自主的に外部研修へ参加している ●制度や介護知識を生かし、管理や判断ができる |
また、副主任や主任などチームをまとめる役職に就くことも増えてくるため、マネジメント力も求められます。
国家資格取得後の介護キャリアアップステップ
国家資格を取得した後は、さらに専門性の高い資格の取得や、管理職を目指す段階に進みます。
ここからは、現場を支えるだけでなく、チームをまとめたり制度の運用に関わったりする立場も目指せます。
専門性の高い資格を取得する
介護福祉士や社会福祉士の資格取得後に目指せる主な資格は次のとおりです。
- ●介護福祉士のファーストステップ研修
- ●認定介護福祉士
- ●介護支援専門員(ケアマネジャー)
- ●認定介護支援専門員(認定ケアマネジャー)
- ●主任介護支援専門員(主任ケアマネジャー)
<介護福祉士ファーストステップ研修>
介護福祉士ファーストステップ研修は、介護福祉士取得後2年以上の実務経験者が対象です。
小規模チームリーダーの育成を目的とし、介護ケアや業務連携、運営管理の基礎を学びます。
232時間のカリキュラムを修了すれば取得できます。
<認定介護福祉士>
認定介護福祉士は、介護福祉士の最上位資格です。
2015年に創設され、2023年12月時点で取得者は約170名と少ないですが、取得すれば現場でトップレベルの専門職として認められます。
取得方法は、以下の条件を満たし、約600時間のカリキュラムを修了すれば取得可能です。
なお、認定介護福祉士には1類と2類の2つがあり、それぞれを受けるための条件が異なります。
【認定介護福祉士養成研修1類を受けるための条件】
| ●介護福祉士の資格を取得し、その後5年以上の実務経験があること。 ●介護職員を対象とする現任研修の受講歴が100時間以上あること。 ●研修実施団体の課すレポート課題か受講試験で一定水準以上の成績を修めていること。(一部免除される場合あり) |
【認定介護福祉士養成研修2類を受けるための条件】
| ●認定介護福祉士養成研修I類を修了すること ●介護職の小チーム(ユニット等の5~10名の介護職によるサービス提供チーム)のリーダー経験があること。 |
<介護支援専門員(ケアマネジャー)>
介護支援専門員(ケアマネジャー)は、利用者が必要な介護サービスを受けられるように、最適なケアプランを立てる資格です。
取得するためには下記のどちらかを満たして、「介護支援専門員実務研修受講試験」に合格する必要があります。
| ●介護福祉士、社会福祉士などの国家資格を取得し、実務経験5年以上かつ900日以上 ●相談・援助業務や介護サービスなどの相談援助業務を5年以上かつ900日以上 |
なお、介護支援専門員の試験合格率は10~20%前後と低い傾向があるため、事前にしっかりと対策をして臨むことが大切です。
<認定介護支援専門員(認定ケアマネジャー)>
認定介護支援専門員(認定ケアマネジャー)は、ケアマネジャーの質やマネジメント能力向上を目的とした資格です。
取得するためには、以下の要件を満たし、日本ケアマネジメント学会が実施している認定ケアマネジャーの試験に合格する必要があります。
| ●介護支援専門員(ケアマネジャー)を保有している ●介護支援専門員(ケアマネジャー)としての実務が3年以上ある |
<主任介護支援専門員(主任ケアマネジャー)>
主任介護支援専門員(主任ケアマネジャー)は、ケアマネジャーをまとめる立場の資格です。
ケアプラン作成や新人研修、地域課題への取り組みなど幅広い業務を担います。
取得するための試験は実施されておらず、70時間の研修を修了することで取得可能です。
条件に関しては登録している地域によって異なり、勤務要件や実務経験などを満たす必要があります。
そのほかキャリアアップが期待できる資格
より専門性の高い資格を目指す方には、次のような資格もおすすめです。
- ●サービス提供責任者
- ●レクリエーション介護士
- ●介護予防運動指導員
- ●終末期ケア専門士
- ●認知症ケア専門士
- ●認知症介護実践リーダー研修
施設長や管理者を目指す
国家資格を取得した方の次のステップとして、施設長や管理者といった役職を目指すことも、自然なキャリアの流れといえるでしょう。
チーム全体を支える役割に就くことで、より広い視点から介護業界に貢献できます。
下記に具体的な役職の取得方法を紹介します。
<特別養護老人ホームの施設長>
特別養護老人ホームの施設長を目指す方は、以下の条件を満たす必要があります。
| ●社会福祉主事の要件を満たす者 ●社会福祉事業に2年以上従事した者 ●社会福祉施設長資格認定講習会を受講した者 |
<介護老人保健施設の管理者>
介護老人保健施設の管理者を目指すためには、医師の免許が必要です。
しかし、都道府県知事の承認を受ければ、医師以外でも管理者になれます。
<グループホームや小規模多機能型居宅介護の管理者>
グループホームや小規模多機能型居住介護の管理者になるためには、以下の要件を満たす必要があります。
| ●認知症介護に3年以上従事した者 ●認知症対応型サービス事業管理者研修を修了した者 |
独立・開業も目指せる
専門性の高い資格取得や役職を目指す方は、独立や開業するのもキャリアアップの一つです。
独立や開業は、自分のやりたいことに挑戦できるため、やりがいを感じやすいでしょう。
しかし、独立や開業するためには介護のスキルや知識に加えて、経営の知識を習得する必要があります。
また、ある程度の開業資金が必要となるため、融資を受けるための資金計画や事業内容を明確に示す準備が必要です。
業務内のキャリアアップ目標
国家資格取得後の業務では、より高いレベルの内容が求められます。
| ●朝の打ち合わせで必要な情報を分かりやすく共有する ●事業所の運営状況を意識しながら業務に取り組む ●事業所の運営状況を意識しながら業務に取り組む ●避難訓練や防災・防火意識をスタッフに伝える ●現場職員の育成やサポートを積極的に行う ●苦手分野や人間関係を把握し、個別にフォローする ●介護保険や専門知識を学ぶ研修に積極的に参加する ●スタッフ研修を企画し、必要に応じて外部講師を手配する ●知識と技術を生かし、常に学び続ける意識を持つ |
さらに、管理者やサービス提供責任者など、施設運営の視点からの業務も増えていきます。
介護の経験からできる他業種へのキャリアアップ
介護の経験は、高齢者の自立支援や介助などの業務を通じて、看護やリハビリ業界など他業種へのキャリアチェンジにも生かせます。
ここでは4つの業種を紹介します。
看護師
看護師は、介護の経験を生かして福祉と看護の両方の視点から利用者を支援できます。
看護師はより専門的な知識が求められるため、給料アップも期待できるでしょう。
作業療法士
作業療法士は、日常生活のさまざまな作業を通じて治療を行う専門職です。
近年は精神面のサポートも重要な役割となっており、認知症や精神疾患の方の生活支援も行います。
理学療法士
理学療法士は、運動機能の改善や維持を目的とした専門職で、高齢者のリハビリ分野で活躍できます。
相手の気持ちに寄り添う力が求められるため、介護経験者にも向いています。
相談支援専門員
相談支援専門員は、障がいのある方やその家族が必要なサービスを受けられるよう支援する専門職です。
介護業界でケアマネジャーや生活相談員として働いていた方は、相談業務の知識や対応力を生かせます。
なお、相談支援専門員になるには実務経験や相談支援従事者初任者研修の受講が必要です。
介護のキャリアアップの助成金
介護のキャリアアップに関する助成金は、個人に直接支払われるものではありませんが、正社員化や処遇改善の取り組みに対して事業所に支給されるものがあります。
具体的には以下のものが挙げられます。
| ●介護・福祉人材確保支援事業費補助金 ●キャリアアップ助成金(正社員化コース) ●ICT導入支援事業 補助金 ●両立支援等助成金(育休取得や働き方改善など) |
これらの助成金は、人材確保や離職防止、柔軟な働き方ができる職場づくりのために活用されています。
積極的に申請し、働きやすい環境づくりに役立てましょう。
申請は各都道府県の自治体やハローワーク、労働局などで行えます。
まとめ
本記事では、介護業界のキャリアアップ方法をケース別に紹介し、具体的な資格や目指せる役職などを解説しました。
介護の仕事は、未経験からでも段階的に成長できる環境が整っており、資格取得や実務経験を通じて着実にキャリアアップが可能です。
自身の目標や働き方に合った道を選び、スキルや知識を積み重ねることで、より専門性の高い職種や管理職を目指すこともできるでしょう。
本記事が今後のキャリア形成の参考になれば幸いです。

