介護業界への関心が高まる中、身体的な負担が少なく、かつ専門性を生かして長く働ける「介護事務」が注目されています。
しかし「未経験でもなれるの?」「資格は必要?」など、疑問や不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、介護事務の具体的な仕事内容から、取得すると有利なおすすめの資格、給料事情、将来性まで詳しく解説します。
併せて、資格取得後のキャリアプランや求人の探し方も紹介していますので、介護事務を目指している方は、ぜひ参考にしてください。
介護事務とは?仕事内容と1日の流れ
介護事務は、介護サービスや事業所を専門的な知識で支える、介護業界における事務のプロフェッショナルです。
ここでは、介護事務の具体的な仕事内容や職場について、詳しく解説していきます。
介護業界に不可欠な「縁の下の力持ち」
介護事務は、介護現場をバックオフィスから支えることから、まさに「縁の下の力持ち」といえます。
介護スタッフが利用者へのケアに集中できるのは、介護事務が複雑な事務作業を正確にこなしているためです。
特に、事業所の運営を左右する介護報酬の請求は、専門知識がなければ成り立たない重要な業務です。
また、施設の「顔」として、利用者さまやそのご家族と最初に接することも多く、丁寧な対応が事業所全体の信頼につながるでしょう。
介護事務は単なる事務職ではなく、介護サービスの円滑な運営に不可欠な「専門性」と「ホスピタリティ」が求められる職種なのです。
主な仕事内容1:介護報酬請求業務(レセプト作成)
介護事務において、もっとも専門的かつ重要な業務が「介護報酬請求業務(レセプト作成)」です。
これは、提供した介護サービスの費用から利用者の自己負担分を除いた額を、国民健康保険団体連合会(国保連)に請求するための明細書を作る作業です。
介護保険制度に基づき、サービス内容や単位数を正確に計算し、専用ソフトに入力します。
正確さが求められる仕事ですが、その分制度への理解や事務スキルを生かせるため、やりがいのある業務といえるでしょう。
介護報酬請求業務(レセプト作成)を通して、事業所の運営を支える重要な役割を担うことができます。
主な仕事内容2:受付・窓口・会計業務
介護事務は事業所の「顔」として、来訪者の受付や電話応対といった窓口業務も担います。
利用者さまやそのご家族、ケアマネジャーなど、多くの人と接するため、丁寧な対応が求められるでしょう。
親身な対応は、利用者さまに安心感を与え、事業所の評判を高めることにもつながります。
事業所の第一印象を左右することから、円滑な運営を支える上で、欠かせない仕事といえるでしょう。
介護事務が活躍できる主な職場
介護事務は、介護サービスを提供するさまざまな事業所で活躍できます。
例えば、特別養護老人ホームや介護老人保健施設などの入居型施設では、入所・退居の手続きや入居者の費用管理など、幅広い事務業務を担当します。
また、日帰りでサービスを提供するデイサービスセンターや、利用者の自宅を訪問する訪問介護事業所も主要な職場です。
職場によって業務範囲は異なりますが、訪問介護事業所を例に挙げると、ヘルパーのスケジュール調整を任されることもあります。
事務スキルを生かしながら現場を支えられるため、やりがいがあるでしょう。
介護事務に資格は必要?
「介護事務になりたいけれど資格は必須?」「未経験でも大丈夫?」など、疑問を持つ方も少なくないでしょう。
ここでは、資格の有無による影響や、未経験者が就職を成功させるためにアピールすべきスキルについて解説していきます。
資格がなくても介護事務の仕事はできる
介護事務の仕事に就く上で、法律で定められた必須の資格はありません。
そのため、無資格・未経験からでも求人に応募し、採用される可能性は十分にあります。
実際に入社後の研修で実務を覚えていくケースもあり、人手不足が続く業界であることも相まって、ポテンシャルを重視して未経験者を採用する事業所も少なくありません。
ただし、業務上では専門知識が求められるため、求人によっては「経験者優遇」や「有資格者歓迎」と記載されていることもあります。
その場合、資格の代わりにほかのスキルにより、意欲や適性をアピールする必要があるでしょう。
資格取得をおすすめするメリット3つ
介護事務において資格は必須ではありませんが、取得することでさまざまなメリットを得られます。
1. 就職・転職で有利になる
資格は専門知識を客観的に証明できるため、採用担当者に高い意欲や即戦力としての可能性をアピールできます。
2. 介護保険制度への理解が深まる
資格の学習を通して、複雑な制度を体系的に学べるため、実務でのスキルを生かしやすくなります。
3. 給与面やキャリアアップに繋がる
事業所によっては資格手当が支給されたり、昇進の評価対象になったりすることがあります。
資格を取得することにより、仕事の理解度が深まるのみならず、キャリア形成や収入面にもプラスになるのが大きな魅力でしょう。
未経験者がアピールすべき3つのスキル
未経験から介護事務を目指す場合、資格以外にもアピールできるスキルがあります。
1. 基本的なPCスキル
介護報酬の請求には専用ソフトを使用しますが、Word・Excelでの書類作成やデータ入力といった基本操作ができると、業務をスムーズに進めやすくなります。
2. コミュニケーション能力
介護事務では、利用者さまやご家族、介護スタッフなど、多くの人と関わります。
相手の話にしっかりと耳を傾け、丁寧に伝える姿勢が信頼関係の構築につながります。
3. ホスピタリティ
ホスピタリティとは「相手を思いやり、快適に過ごしてもらうための気配り」を意味します。
施設の受付や電話対応などの業務において、安心感を与えられる丁寧な対応をすると、利用者やスタッフと信頼関係を深められるでしょう。
介護事務のおすすめ資格8選!
介護事務の資格は種類が多いため、取得を目指す際には、自分の目的に合った資格を選ぶことが大切です。
ここでは、特に介護事務としての評価が高くなり、かつ実務で役立つおすすめの資格を8つ紹介します。
ケアクラーク技能認定試験
日本医療教育財団が主催する「ケアクラーク技能認定試験」は、歴史と知名度のある資格です。
介護事務の知識のみならず、コミュニケーション・高齢者心理・医学一般など、幅広い教養が問われます。
試験は学科と実技で構成され、在宅あるいは会場での受験が可能です。合格率は比較的高く、未経験者でも十分に合格を目指せます。
事務スキルと対人スキルを同時に証明できるため、就職活動で有利に活用できるでしょう。
介護事務管理士技能認定試験
技能認定振興協会(JSMA)が主催する「介護事務管理士技能認定試験」は、業界知名度の高い資格の一つです。
介護保険制度や介護報酬請求に関して、深い知識を持っていると証明でき、多くの介護事業所で評価されています。
試験は学科と実技に分かれており、レセプトの点検・作成能力が問われます。
なお、テキストの持ち込みが可能なため、初めての方にもおすすめの資格でしょう。
介護報酬請求事務技能検定試験
日本医療事務協会が主催する「介護報酬請求事務技能検定試験」は、レセプト業務に特化した資格です。
即戦力として活躍できるスキルを証明するには、おすすめの資格となります。
試験では介護保険制度の知識を問う学科と、レセプトを作成する実技が出題されます。
同協会の認定講座修了者が受験対象となるため、講座で学んだ知識をそのまま試験に生かせる点がメリットでしょう。
合格率は高く、講座でしっかりと学習すれば、未経験からでも安心して取得を目指せます。
介護保険事務士
「介護保険事務士」は、一般財団法人つしま医療福祉研究財団が認定する介護系資格です。
介護報酬請求業務のみならず、ケアマネジメントのサポートまで行える人材育成を目的としています。
指定の教育機関で所定のカリキュラムを修了し、最終試験に合格することで資格が授与されます。
将来的に介護事務のリーダーを目指すなど、より専門性を高めたい方におすすめの資格でしょう。
介護事務実務士
「介護事務実務士」は、医療福祉情報実務能力協会(MEDIN)が認定する資格です。
介護報酬請求事務はもちろん、介護保険制度全般に関する幅広い知識と、実践的スキルの証明が可能となります。
試験は学科と実技で構成されており、介護事務に必要な知識を網羅しているかが試されます。
資格取得のためには、まず認定の教育機関の通信講座や通学講座を受講し、全カリキュラムを修了しなければなりません。
講座で介護の知識をしっかりと学べるため、初心者でも安心して挑戦できるでしょう。
介護保険事務管理士
「介護保険事務管理士」は、一般社団法人日本病院管理教育協会が認定する資格です。
介護報酬請求の知識に加え、医療保険制度との関連性についても深く学べる点が特徴です。
医療機関が提供する介護サービスなど、医療と介護両方の知識が求められる職場で高く評価されるでしょう。
なお、協会指定の教育機関で学ぶ必要があり、独学での取得はできませんが、質の高い専門知識を身につけられます。
そのため、医療と介護の連携を担うキャリアを考えている方におすすめの資格です。
簿記検定
「簿記検定」は、直接的に介護事務につながる資格ではありませんが、取得しておくとさまざまな場面で役に立ちます。
介護事務の仕事には、利用者負担金の管理や経費精算など、会計業務が含まれることもあります。
簿記の知識があれば、お金の流れを正確に把握し、適切に処理するスキルを生かせます。
特に、小規模な施設で働きたい方や、将来的に施設の運営管理に携わりたい方には、有力な資格となるでしょう。
日商簿記検定2級以上を目指すと、ほかの応募者との差別化にもつながり、採用で有利に働く可能性も高まります。
医療事務技能認定試験
「医療事務技能認定試験」は、介護事務の専門資格ではありませんが、介護の仕事と関連性が高いことから、取得後に生かせる場面が多い資格です。
例えば、医療機関が運営する介護老人保健施設などでは、医療保険と介護保険の両方の知識が求められます。
そのため、医療事務技能認定試験の資格があると、医療保険制度の基礎知識を持っていることを証明でき、採用時に高く評価される可能性があるでしょう。
また、介護保険と医療保険のレセプトは共通点も多いため、知識を応用しやすいのもメリットです。
介護事務の資格取得時に実践したい勉強方法
資格取得を決めたら、次に学習方法について考えましょう。
ここでは、介護事務の資格取得時におすすめの勉強方法を解説していきます。
スクールや通信講座を活用する
「効率的に学習したい」「一人での勉強に不安がある」という方には、スクールや通信講座がおすすめです。
専門家が監修したカリキュラムにより、合格に必要な知識を無駄なく学べるのが最大のメリットとなります。
分からない点は講師に質問できるため、疑問をその場で解消しながら、安心して確実に学習を進められるでしょう。
また、同じ目標を持つ仲間と学ぶことで、モチベーションを維持しやすいという利点もあります。
独学で介護事務の資格取得を目指す
学習費用を抑えたい方や、自分のペースで勉強を進めたい方には、独学が向いています。
市販のテキストや問題集を使えば、数千円からでも学習を始められます。
このように、勉学にかかる費用を安く抑えられる点と、時間や場所に縛られず自由に学習計画を立てられる点が独学のメリットです。
自分に向いている勉強方法を取り入れる
「スクール」「通信講座」「独学」には、それぞれ異なる特徴があります。
合格への近道は、各方法の特長を理解し、自分にもっとも合った学び方を選ぶことです。
例えば、短期間でしっかり学びたい方にはスクール、仕事や家事と両立しながら空き時間で学びたい方には通信講座、自分のペースで費用を抑えて学びたい方には独学が向いています。
まずは、ご自身の性格や生活スタイル、予算を整理し、無理なく続けられる方法を選ぶことから始めましょう。
介護事務の給料・やりがい・キャリアパス
介護事務として働く上で、給料・やりがい・将来のキャリアを意識しておくことも大切です。
ここでは、介護事務のリアルな給与事情や仕事の魅力、将来性について解説していきます。
介護事務の平均的な給料はいくら?
介護事務職員の平均給与額*は常勤で約31万円とされ、非常勤の平均給与額*は約16万円です。
これはあくまで平均値であり、施設の形態や規模、地域、本人の経験や資格によっても変動します。
また、資格手当を支給する事業所も多いため、資格取得は給与アップにつながる有効な手段といえるでしょう。
*2025年10月現在
出典:厚生労働省「令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果」P126
介護事務として働くやりがい3つ
介護事務の仕事には、さまざまなやりがいがあります。
1. 介護現場を支えている実感がある
事務作業を通じて介護スタッフをサポートし、間接的に利用者さまの生活の質向上に貢献できることは、介護事務の大きなやりがいです。
2. 介護の専門知識が身につく
複雑な介護保険制度を学び、正確なレセプト作成スキルを身につけることで、専門職として働く自信にもつながります。
3. 利用者さまやご家族から感謝される
窓口での丁寧な対応に対して「ありがとう」と直接声をかけてもらえる機会も多く、人の役に立っていることを実感できるでしょう。
知っておきたい仕事の大変なところ
介護事務の仕事は、やりがいが大きい一方で、大変な面も多数あります。
大変なこととして代表的なのは、月末から月初にかけての繁忙期です。
レセプトの提出期限が毎月10日のため、この期間は業務が集中し、残業が発生しやすくなります。
また、介護保険制度は数年ごとに改正されるため、常に最新の情報を学び、知識をアップデートし続ける必要があります。
高齢化社会で高まる需要と将来性
日本の高齢化は今後も進行し、介護サービスの需要はますます増加すると予想されます。
それに伴い、事業所の運営を支える介護事務の役割は、より一層重要性を増していくでしょう。
正確な介護報酬請求は、事業所の経営基盤を安定させるために不可欠です。
AI化が進んでも、利用者さまへの細やかな対応や制度の複雑な解釈など、人にしかできない業務は多く存在します。
そのため、景気に左右されにくい安定した仕事だといえるでしょう。
資格取得後のキャリアプランと求人の探し方
資格取得はゴールではなく、理想的な働き方を実現するためのスタートラインです。
ここでは、資格取得後の具体的なキャリアプランの例や、求人情報の効率的な探し方、選考で資格を最大限に生かすポイントを解説していきます。
資格を生かせるキャリアパスの具体例
介護事務として経験を積むと、さまざまなキャリアパスが開けます。
例えば、事務部門のリーダーや主任を目指す道が挙げられます。
複数のスタッフをまとめながら、業務改善や新人教育を担当するポジションで、チーム全体のスムーズな運営に貢献できるやりがいのある仕事といえるでしょう。
また、介護保険制度の知識をさらに深め、ケアマネジャー(介護支援専門員)の資格を取得することも可能です。
ケアプラン作成などの実務において、これまで培った事務スキルや知識を生かすことができます。
このように、資格を取得し経験を積むことにより、事務のみならず介護全体の幅広い分野で活躍できる可能性が広がるでしょう。
介護事務の求人を見つける3つの方法
自分に合った求人を見つけるには、複数の方法を組み合わせて探すのが効果的です。
1. 介護・福祉業界専門の求人サイト
介護事務の求人が豊富で、施設の種類や雇用形態など、細かい条件で絞り込んで探せます。
2. ハローワークの活用
地域に密着した求人が多く、職員に相談しながら仕事を探せます。
未経験者歓迎の求人も多数あり、安心して応募できるのが特徴です。
3. 転職エージェントの利用
非公開求人の紹介や、応募書類の添削などのサポートを受けられます。
自分の希望や経験に合った求人を効率的に探したい方におすすめです。
履歴書や面接で資格を効果的にアピールするコツ
取得した資格は、採用担当者にその価値を伝えることが重要です。
履歴書に記入する際には、資格欄に正式名称を正確に記載しましょう。
自己PR欄では「資格取得の過程で何を学んだか」「その知識をどう仕事に生かしたいか」を具体的に述べます。
例えば「正確なレセプト作成で貢献したい」といったように、意欲と保有するスキルを伝えましょう。
面接では「専門性を身につけて長く貢献したい」など、前向きな姿勢を示すことにより、学習意欲の高さと仕事への熱意をアピールできます。
まとめ
介護事務は、必ずしも資格が必須というわけではなく、未経験からでも挑戦可能な職種です。
しかし「レセプト作成」という専門的な業務を担うことから、資格を取得することで就職が有利に進み、キャリアアップや昇給にもつながりやすくなります。
高齢化が進む社会において、介護事務の需要はますます高まり、安定性とやりがいに満ちた仕事です。
ぜひ、この機会に介護事務の資格取得を通し、新しいキャリアの形成を進めてみてはいかがでしょうか。

