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27自然な立ち上がりを支援する介助方法とは?シーン別の介助方法を解説

立ち上がり動作は、1日平均20回以上行われる生活動作で、介助者にとっても習得しておきたい重要な技術といえるでしょう。

無理な介助は、介助者や利用者の負担となり、筋力低下や廃用症候群の原因にもなります。

そのため、残存機能を生かし、安全で自然な立ち上がり動作に沿ったサポートが大切です。

そこで本記事では、基本の立ち上がり動作や、シーン別の介助方法、介助のポイントを解説します。

介助者と利用者、双方にとって安全に立ち上がり介助ができるよう、ぜひ参考にしてください。

高齢者の立ち上がり介助が必要となるケースとは?

立ち上がりで介助が必要になると、高齢者のADL(日常生活動作)は大きく低下します。

立ち上がりを困難にする原因はいくつかありますが、ここでは大きく3つに分けて解説していきます。

筋力の低下

加齢などの理由による活動量や新陳代謝の低下、栄養状態の悪化は、筋力の低下を招きます。

筋力低下は、日常生活動作のさまざまな場面に影響しますが、立ち上がりや歩行能力にも支障をきたし、さらなる活動量の低下や転倒の原因にもつながるでしょう。

特に、大腿四頭筋や腸腰筋、大臀筋の筋力低下は、立ち上がり動作に大きく影響します。

筋力低下による立ち上がり困難な状態の防止策として、ウォーキングや運動、タンパク質の摂取が挙げられます。

加えて、残存機能を生かした介助により、普段の活動量を低下させないことも大切です。

バランス能力の低下

膝関節や股関節、足首の関節が硬くなると、立ち上がるときにバランスを保持することが難しくなります。

拘縮によって筋肉が正常に機能しなくなることも、立ち上がりを困難にする要因の一つです。

パーキンソン病や脊髄小脳変性症など、高齢者に起こりやすい疾患は、筋肉のこわばりや運動機能の障害を引き起こし、バランス能力の低下につながります。

バランス能力が低下すると、歩行や立ち上がりが難しくなり、結果として活動量が減り筋力低下を招くこともあるでしょう。

そのため、継続的なストレッチや体操、リハビリテーションなどを行い、身体機能を維持することが重要となります。

片まひ

脳卒中による後遺症の一つである片まひも、歩行や立ち上がりに大きな影響を及ぼします。

まひ側で体を支えることが難しくなると、活動量が減り、それに伴って筋力低下も進む可能性があります。

片まひのある利用者を立ち上がり介助する際は、まひ側が膝折れしたり、外側に開いたりしないよう、介助者の足を側面に当てて支える必要があります。

また、車イスへの移乗時は、健側に車イスを設置し、体をひねる際にまひ側を引っかけたり、必要以上に負荷をかけたりしないように気を付けましょう。

ボディメカニクスに則した立ち上がり動作とは?

力任せの介助では、残存機能を十分に生かせず、介助者への負担も大きくなってしまいます。

ボディメカニクスの原理を理解し、残存機能を最大限に生かした介助方法を学ぶことにより、安全かつスムーズな立ち上がりをサポートできます。

ここでは、利用者が自然に近い動作で立ち上がれるようにするポイントを解説していきます。

1. 頭を下げる

イスに座った状態から足を引き、おじぎをするように頭を下げて、前傾姿勢を取ります。

人は、頭を下げずに立ち上がることができません。

額に軽く指を当ててみると、頭を下げられない場合は立ち上がれないことが分かります。

頭を下げることで重心を足に移せるため、立ち上がりが可能となるのです。

このとき、猫背にならないように背筋を伸ばし、上半身全体を前に倒すことを意識しましょう。

2.重心を足に乗せる

頭を下げたら、重心を足に移します。

足をしっかり引いていると、頭を下げるだけで両足に体重がかかるのを感じられます。

座っているときの重心はお尻にあり、そのままでは立ち上がれません。

足を引き、頭を下げることで重心が足に移動し、お尻を浮かせることが可能となります。

そのため、両足で体重を支えるこの姿勢を覚えておきましょう。

3.お尻を浮かせる

両足に重心を移すと、自然とお尻が軽くなって浮いてきます。

そのまま全体重を両足にかけ、中腰の姿勢を作りましょう。

このとき、頭を下げすぎたり、重心が前に行きすぎてかかとが浮いたりすると、前方に倒れる危険があります。

そのため、足裏全体をしっかりと地面につけることが重要です。

足首の関節こわばりや拘縮、平衡感覚・運動機能の障害がある場合は、足裏がつきにくくバランスを崩しやすいため、特に注意が必要です。

4.膝を伸ばして姿勢を保つ

最後に、膝を伸ばして立ち上がります。

足裏全体で床を押すようにして、ゆっくりと上体を起こしましょう。

バランス能力が低下している高齢者は、このとき体が左右にふらつくことがあります。

そのため、姿勢が崩れないように支えることが大切です。

筋力低下や拘縮などの症状がある場合は、立ち上がりをサポートする介助が必要です。

ただし、介助は最低限にとどめ、自力で立ち上がってもらうことを意識しましょう。

イスからの立ち上がりの介助方法

筋力低下などの理由により、自力で立ち上がれない方でも、適切な介助があれば立ち上がり動作が可能です。

ここでは、自然な立ち上がり動作に準じ、イスからの立ち上がり介助の方法を解説していきます。

声をかける

最初に行うのは声かけです。

今から何をするのか、声をかけて目的を理解してもらうことで、利用者の協力を得やすくなり、残存機能を生かした介助がしやすくなります。

利用者の同意を得るためにも、声かけと説明は必ず行いましょう。

脇から手を入れ、肩甲骨や腰に手を回す

声かけで同意を得たら、介助者は利用者の両脇に手を入れます。

脇を引っ張って持ち上げると、痛みが出ることがあるため、手は肩甲骨や腰を支えるようにします。

このとき、背中を曲げた猫背姿勢では腰に負担がかかるため、背筋を伸ばした状態で行いましょう。

可能であれば、利用者には介助者の肩や首に手を回してもらうと、立ち上がり時の安定感が増します。

おじぎをしてもらう

利用者には両足を引き、おじぎをするように頭を下げてもらいます。

このとき、背中が丸くなりすぎないよう注意しましょう。

高齢者に多い猫背(老人性円背)は、一見前傾姿勢に見えますが、骨盤が後傾しているため重心は後方にあります。

この姿勢では、頭を下げても重心を足に移せません。

そのため、骨盤が起き上がっており、上半身全体が前傾していることを確認しましょう。

体重を足に移す

頭を下げることで重心が両足に移り、お尻が自然に浮くことを意識しましょう。

体が固く前傾姿勢を取りにくい場合は、介助者が前傾姿勢を補助します。

肩甲骨や腰に回した手で利用者を軽く引き、重心移動をサポートしてください。

後方に引くときは、介助者も腰を落とし、力任せにならないように注意しましょう。

立ち上がる

お尻が浮いたら、後方へ引くようにして、利用者が自力で立ち上がるのをサポートします。

上方向に引っ張るのではなく、介助者も腰を落として重心を後方へ移すことにより、無理な力を使わずに介助できます。

可能であれば、膝を伸ばしてまっすぐ立ってもらってから移乗を行いましょう。

立つのが難しい場合は、お尻を浮かせた後、移動先に近い足を軸に中腰のまま回転して移ってください。

また、片まひがある場合は、移動先を健側に設定し、健側の足を軸に回転すると安全です。

【シーン別】立ち上がり介助方法

介護の現場では、イスからの立ち上がりだけでなく、床からの立ち上がりや、狭い浴槽内での立ち上がりが必要な場面も多く見られます。

そこで、シーン別の介助方法のポイントについても解説していきます。

床に寝ている状態からの立ち上がり

施設によってはベッドではなく、布団で寝ている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

ほかにも、転倒によって仰向けで倒れている利用者に遭遇することも少なくないでしょう。

はじめに、このような場面での介助方法を解説していきます。

イスからの立ち上がりに比べると、介助の程度が重くなるため、負担が大きすぎる場合は無理をせず、二人介助で実施しましょう。

 

<上半身を起こす>

まずは、上半身を起こすところから始めます。

介助者は寝ている利用者の横でしゃがみ、肩に手を回したら、重心移動によって上半身を起こします。

 

<後方から支える>

上体を起こしたら、介助者は後方へ回り込み、倒れないように支えます。

そして、利用者の後方から脇に手を入れ、お腹の前で組みます。

腕を入れる際は、斜め下に向けて入れるようにしましょう。

利用者には両膝を立ててもらい、両腕をお腹の前で組み、起き上がる準備をします。

 

<立ち上がる>

立ち上がる際は、両足に重心が移るよう、後方から体を前斜め上に向かって押し上げます。

頭が両足より前に出たら、体を上方向に引き上げ、立ち上がりましょう。

そのまま立位を保持できない方の場合は、手をついて支えられる車イスやテーブルなどをあらかじめ前方に置いておくと、立位の保持がしやすくなります。

立ち上がったら車イスなどに移乗し、利用者の体調を確認しましょう。

浴槽内での立ち上がり

浴槽内では、水の浮力を利用しながら、立ち上がるための姿勢を整えることが大切です。

うまく立ち上がれない場合は、利用者の手すりをつかむ位置や、介助者が力を加える方向にも注意し、スムーズに立ち上がれるように工夫してみましょう。

 

<膝を曲げてもらう>

浴槽から立ち上がる際は、まず膝を曲げて立ち上がる姿勢を整えます。 

手すりがある場合は、つかみながら膝を曲げてもらいましょう。 

利用者自身で膝を曲げられないときは、介助者が手伝ってください。

 

<お尻を浮かしながら体重を足に移す>

床から立ち上がるときと同様、お尻を浮かせて両足に体重を移します。 

水中では浮力があるため、お尻を浮かせる動作は比較的容易です。

しかし、足が滑りやすく、うまく体重を移せないことがあります。 

その場合は、介助者が両膝を押さえて滑らないようにしたり、お尻を浮かせる動作を手伝ったりしましょう。 

なお、手すりは横向きよりも、縦向きのほうが体を起こしやすいため、設置されていたら積極的に利用してください。

 

<立ち上がる>

立ち上がる際も、水の浮力を利用してゆっくりと立ち上がります。

急に立ち上がると、水圧の影響によって脳の血流が一時的に少なくなり、ふらつくこともあるため注意しましょう。

介助者は利用者の側方からお尻を支え、斜め上に押し上げます。

利用者は縦向きの手すりか、正面に手すりがあればつかんで立ち上がると良いでしょう。

ボディメカニクスの原理に則した立ち上がり介助のコツ

ボディメカニクスとは、介助技術でよく用いられる力学の理論のことです。

ベッド上で横を向いたり、体を起こしたり、立ち上がったりする際に、人体の構造を考慮した効率的な介助方法を指します。

介助者にとっては、負担が軽くなるとともに安定性も向上するため、積極的に取り入れていきましょう。

支持基底面を広くとる

両足と床が接触している部分と、両足の間にある部分とを合わせて「支持基底面」と呼びます。

立ち上がりの際、支持基底面を広く取ると、バランスを保ちやすくなって安心です。

具体的には、足を肩幅くらいに開くことにより、立ち上がり動作が安定します。

介助を行う際は、利用者の支持基底面をしっかりと確認しましょう。

介助者側も同様に、支持基底面を広く取ることで、利用者の体を支えやすくなります。

また、足を横だけでなく斜めに大きく開くと、腰を落としやすく、重心移動もしやすくなるため効果的です。

重心を近づける

利用者と介助者の重心を近づけることで、利用者の腰への負担が減るとともに、介助者の力が伝わりやすくなるため、介助負担を減少できます。

反対に重心が遠いと、力を加える際に無理な姿勢となりやすく、負担も増えます。

そのため、介助時はなるべく重心を近づけるよう、双方が密着することが大切です。

大きな筋肉を使う

介助時は腕の筋肉だけでなく、背筋や足の筋肉も使いましょう。

腕の力だけで利用者を支えるのは困難な場合も多く、無理をすると腕や肩を痛める原因にもなります。

特に、足の筋肉は全身の筋肉の70%を占めているともいわれています。

腕の筋力だけでは困難な介助でも、背筋や足の筋力で補うことで、負担の少ない介助が行えるでしょう。

重心移動やてこの原理を上手に使う

立ち上がりや移乗の際、無理に引っ張ったり、持ち上げたりすると、介助者にも利用者にも負担がかかるでしょう。

そこで、体の負担を減らしつつ大きな力を生み出すのが、重心移動やてこの原理を使った介助法です。

重心移動では、介助者自身の体重を利用することにより、重いものでも動かすことができます。

一方、てこの原理とは、支点・力点・作用点の関係を利用し、小さな力で大きな力を生み出す方法です。

体を持ち上げたり、ひねったりせず、重心を前後や左右に移動させる、またはてこの原理を活用することで、少ない力で安全に介助ができるでしょう。

まとめ

立ち上がり介助は、日常生活でもっとも頻度が高く、利用者の自立度や生活の質に大きく影響する重要な動作です。

無理な介助は、介助者の腰痛や、利用者の転倒リスクを高めます。

一方、自然な立ち上がり動作に沿った介助を行えば、利用者の残存機能を生かしつつ、介助者の負担も軽減できるでしょう。

そのためには、ボディメカニクスの原理を理解し、適切に活用することが大切です。

日々の介助の中で「安全に」「無理なく」を意識して、利用者の自立支援と、介助者の負担軽減の両立を目指していきましょう。